富山県立中央病院

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小児科

小児科photo当院小児科は広く一般小児科診療を行っていますが、専門外来 として、循環器外来、内分泌・代謝外来、免疫・アレルギー外来、新生児 外来を行っています。
また、当院には総合周産期母子医療センターがあり、県内の未熟児新生児医療の中核を担っています。 今年度より小児外科も併設され、より充実した新生児医療を行っていきます。
また、第3次救命救急センターがあり、毎日当直医を置き、救急患者に対応しています。 さらに、当院はユニセフから「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されており、母乳育児の推進に力を 入れ、より良い母子関係の確立に努めています。
以上のような特徴を生かしながら、日々の診療を行っていますが、これからもよりいっそう努力し、医療の向 上に邁進していきたいと思っています。
また、当院は初期、後期研修医も多数受け入れており、小児科をローテーションする研修医の指導にも力を入れてい ます。今後も研修病院としても成長していきたいと考えています。

主な対象疾患

循環器(小児および成人先天性心疾患、小児不整脈など)

 循環器外来ではおもに先天性心疾患を中心に診療を行っています。生まれた直後から心雑音や重い症状がある新生児から先天性心疾患の成人の方まで幅広く診療をしています。とくに重症な新生児の心臓病は胎児期から診断・管理を行うこともあります。
 その他、小児期から認められる不整脈(頻脈および徐脈)に対する治療も薬物治療からカテーテルアブレーション治療まで必要に応じて行っております。また、川崎病後の心臓合併症を認める場合、学校心臓検診で精密検査必要とされたお子さんの精密検査も行っています。
 病気の診断はレントゲン、心電図、心臓超音波検査から心臓CT検査・心臓カテーテル検査・心臓シンチ検査など高度な診断装置を用いる検査まで行うことが可能です。また、不整脈の診断には24時間心電図や運動負荷心電図などからカテーテル検査である電気生理学検査まで行っています。
また、胎児期に心臓に病気が疑われたお子さんの心臓超音波検査を行い診断を行っています。
手術が必要な場合は心臓血管外科との全面的な協力体制のもとで術前・術後管理を行い、遠隔期では小児の成長にあった生活指導を行っています。
 小児の心臓病で診断・治療にお困りの例がございましたら、胎児から成人までどうぞお気軽にご相談ください。
<主な対象疾患> 
先天性心疾患(胎児から成人まで)、小児不整脈(頻拍、徐脈)、川崎病心臓合併症、心筋症、心筋炎などの心筋疾患など

内分泌・代謝疾患

1)成長障害診療
 地域の保健師/保育所/養護教諭と協力しながら母子手帳/保育園・学校の成長記録を元に縦断的成長記録を評価の上,症例に応じて生活指導・ホルモン治療を行っています.
気がかりな成長パターン

CSIIとカーボカウント法2)小児糖尿病
 I型糖尿病の診療を中心に,適応ある希望者にはチーム医療・クリニカルパス運用しながら積極的にインスリンポンプ治療・カーボカウント法を導入しています.

3)生活習慣病
 主に富山市すこやか検診で指摘された肥満/高脂血症児童を対象に食事/運動をはじめとした生活指導を行っています。
12歳女児(肥満度47%)週間運動記録

4)タンデムマススクリーング事業 事後対応
2014年3月から県内で開始されたタンデムマススクリーニングの精査機関として,県衛生研究所・福井大学小児科学教室と連携し速やかに事後対応しています.

児童虐待対応
 2010年に要保護児童対応委員会立ち上げ・院内マニュアルを整備し要保護事例の医学評価/家族支援に加え,周産期からの予防的視点を持って関係部署と連携しています.

在宅重症児/者の医療的ケア支援・危急時対応
 在宅/施設入所中の重心児/者の危急時受け入れ病院として,小児期年齢を越えた症例も含め病棟スタッフと伴に地域担当医/機関と連携して重心児医療に取り組んでいます.

未熟児新生児

 当施設は富山県唯一の総合周産期母子医療センターです。NICU9床、GCU20床の計29床の新生児病床を持ち、超・極低出生体重児の入院は年間約30例です。小児外科疾患、小児循環器外科疾患、脳神経外科疾患などすべての新生児疾患に対応しています。また特殊治療として、重症新生児仮死に対する脳低温療法、腎不全/代謝異常症に対する血液浄化療法の施行が可能です。当院では母乳育児を推進しており、できるだけ多くの赤ちゃんが母乳で育てることができるように支援しています。面会はご両親のみでなく、赤ちゃんの兄弟や祖父母も可能です。家族の皆さんで赤ちゃんとゆっくり病棟内で過ごせるように配慮しています。GCUには個室があり、赤ちゃんと一緒に宿泊することができます。退院後は当院のフォローアップ外来で引き続き経過観察いたします。他県のNICUを退院されたお子さんのフォローアップも受け付けています。

腎臓

 主に月曜日と水曜日に腎臓病の慢性期外来を行っております。対象疾患は慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、夜尿などの疾患です。
 血尿、蛋白尿を呈する患者様が来院されたときには、精査を行います。成人よりは頻度は低いですが検査の結果必要であれば、腎生検を行い、診断を確定させます。
 水腎症などの外科とともに見るのが必要な疾患は小児外科と協力して診療していきます。

腎臓:主に月曜日と水曜日に腎臓病の慢性期外来を行っております。学校検尿などで血尿蛋白尿を指摘された方、肉眼的な血尿を訴える方、尿量の減少、体重の急激な増加、浮腫、夜尿、尿路感染症などの患者様を診断し治療いたしております。

診療担当表

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
午前 1診 竹田 本多 谷内 本多 作村
2診 谷内 宮下 作村 宮下 上野
3診 上野 藤田 上野 藤田 宮下
午後 1診 竹田 本多 谷内 1ヶ月健診 作村
2診 谷内 宮下 作村 1ヶ月健診 竹田
3診 上野 藤田 上野 1ヶ月健診 宮下

午前・・・一般外来
午後・・・特殊外来
月、火、水、金・・・予防接種
木・・・乳児健診(受付は13:00~13:30)

医師紹介

医師名・職位 専門分野 資格
医長 藤田修平 部長
藤田 修平
(ふじた しゅうへい)
小児心疾患
不整脈
成人先天性心疾患
日本小児科学会専門医・指導医
日本小児循環器学会専門医
日本循環器学会専門医
日本不整脈学会専門医
日本小児心電学会幹事
部長
宮下 健悟
(みやした けんご)
医長
上野 和之
(うえの かずゆき)
小児腎疾患・膠原病
小児科一般
日本小児科学会専門医
日本腎臓病学会専門医
医長
谷内 裕輔
(やち ゆうすけ)
副医長
作村 直人
(さくむら なおと)
副医長
竹田 義克
(たけだ よしかつ)
小児科一般
小児循環器、成人先天性心疾患
小児科学会認定小児科専門医
内科学会認定内科認定医
医師
轉馬 珠美
(てんま たまみ)
医師
岩田 茉祐
(いわた まゆ)
医師
本多 真梨子
(ほんだ まりこ)

外来診療

 一般外来は原則として午前のみです。(月~金。初診の受付はAM11:00まで。再診の受付はAM11:30まで。)急患の場合は午後も診療します。
 午後は原則として専門外来で、予約制です。下記のような専門外来があり、それぞれの分野の専門の医師が診察にあたっています。

予防接種
アレルギー、予防接種
内分泌、予防接種
乳児健診
心疾患、アレルギー

内分泌外来

 低身長、甲状腺疾患などのホルモン異常、若年性糖尿病などの代謝性疾患を診療します。

心疾患外来

 先天性心疾患、川崎病、不整脈などの心臓疾患を診療。学校の心臓健診の3次健診も担当しています。

アレルギー外来

 気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を診療します。

予防接種

 各種の予防接種を行なっています。(ポリオ以外の予防接種は全て行なっています。)予約制ですので予め小児科外来へ電話をし、予約をしてから御来院下さい。

乳児健診

 1か月健診の他、各月齢、年齢に応じて健診を行なっています。
 時間外外来は、夜間、休日とも毎日、当直の小児科医が救急外来にて対応します。(再来患者のみ)

治療について

1.感染症について

 この小児科のホームページは、日頃子供達が一番遭遇することが多い病気、すなわち感染症について記載を致しました。「もしもこの世の中から感染症がなくなれば」、たぶん我々小児科医の仕事もかなり減ると思います。しかし子供に限らず大人も年に数回はまずこのお風邪に悩まされ、また特に風邪をひきやすいと言われる方は、それ以上にかかりつけ医に足を運ばれていると思います。
 さて感染症には非常にたくさんの疾患があります。子供に特有の疾患といえば、突発性発疹、麻疹、水痘(水ぼうそう)、風疹、おたふく(流行性下耳腺炎) 、伝染性紅斑(りんご病)、溶連菌感染症、伝染性膿痂疹(とびひ)などがそうです。しかし、これらは逆に特徴的所見があり、皆様の中にもすでに経験され、あるいは、その特徴的所見から、あまり見落とすことなく、お医者さんに診てもらっているのではないかと思います。

2.風邪について

1.俗に呼ばれる「風邪(かぜ)」とは?

 この「風邪」とは「風邪症候群」の略語で、症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み(咽頭痛)、咳(咳嗽)、痰(たん、たんづまり)といった呼吸器感染症状とともに、発熱、頭痛、腰痛、全身倦怠感などの全身症状を伴う症候群で、一般的にお医者さんが言う「上気道炎」のことです。この上気道炎は、小児にとって最も罹患頻度 (かかる確率)の高い感染症です。
 上気道炎と言ってもその範囲は広く、鼻咽頭炎、咽頭炎、扁桃炎、さらにクループ症候群と呼ばれるもの、中耳炎や副鼻腔炎もその仲間の一つでしょう。

2.原因は?

 「風邪症候群(上気道炎)」の病因は80 ~ 90%がウイルス性(この地球上に200種類以上存在します)です。
 その他マイコプラズマ、クラミジア、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(インフルエンザウイルスとは別物です)などの、ウイルスとは異なる微生物や細菌も稀に認められます。小児に限らず人は時にこれら複数ある病原体に重複感染していたり、さらに同じ病原体に 2 度、3 度と罹患することも珍しくありません。

図1、季節的にみた主要ウィルスの流行パターンについて 右の図1を参考にしてみて下さい。ウイルスの流行は、季節、地域、年によって違いがあります (日本小児科学会雑誌 96 巻6号より抜粋)。またその年によっては、1ヶ月ほど前後にずれて流行することがあります。

3.どうして、かかるの?

 ウイルスや細菌の感染の多くは、飛沫感染(咳、くしゃみに混ざって人から人へ伝染する)です。また汚染された手や指より鼻粘膜へ接触し感染します。

4.治療は?

 現在のところ、これらのウイルスに直接効く薬剤はありません(一部を省く)。多くは対症的治療が中心です。安静にし、鼻水や咳がひどいとき、発熱のため機嫌が悪かったり、あるいは食事をとらなかったり、吐き気、下痢を認めるような時には、対症療法のためのお薬を使用します。

3.春・秋の風邪について

 ライノウイルスやパラインフルエンザウイルスといわれる、ウイルスが中心です。症状は、発熱に続いてくしゃみ、鼻汁、鼻閉などが現れ、時に咽頭痛 (のどの痛み)、咳嗽がみられます。特に乳児期には、鼻閉に伴う哺乳障害や睡眠障害が問題になることがあります。また、ちょっとした風邪症状から、時にゼイゼイとまるで喘息の様な症状まで認める程に悪化すること、いわゆる喘息様気管支炎 (気管支喘息とは少々別物のお考え下さい)などを併発することもあります。

4.夏風邪について

 7~9月にかけてかかる風邪を、概して「夏風邪」とお考え下さい。夏風邪を引き起こす主なウイルスは、エンテロウイルス(エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスの3種類のウイルスが仲間としています)とアデノウイルスです。

1.エンテロウイルスとは?そして症状は?

 エンテロウイルスにもたくさんの型があります。またそれら一つ一つが色々な疾患の原因となります。代表的な疾患に関しては、後述致しますが、これらウイルス感染の初期はやはり風邪症状から始まると言っても過言ではありません。
※型というのは、そのウイルスの構成(蛋白構造や遺伝子構造)がほんの少しずつ変わっておりながら、性質そのものがほぼ同じもので、いわばウイルス間の親戚同士とでも考えて下さい。

 夏風邪の症状は、一般的なお風邪症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み(咽頭痛)、咳(咳嗽)、痰(たん、たんづまり)、のどの痛み、そして発熱などですが、時に消化器症状である下痢、腹痛などや発疹(ウイルス性発疹症)を伴うこともあります。
 その他に、気管支炎や肺炎、重篤な合併症として、無菌性髄膜炎、心筋炎・心嚢炎、肝炎に及ぶケースもあります。以下に簡単な、侵入経路と増殖部位、疾患についてまとめた図を提示致します。
 しかし、「なんでこんなことが起こるのか?」、 当然疑問に思われる方もおられると思います。人によって色々と症状の現れ方に差が生じることは、医学的にも「何故そうなるのか?」最終的な結論をみません。基本的には、その子の年齢、体質やかかったウイルスの量的なもので左右します。
 合併症の現れ方を、感染様式からご説明しますと、ウイルス感染は、感染後にまず第一段階のウイルス増殖が、咽頭周辺の組織内で行われ、この増殖したウイルスが、ウイルス本来好きな組織 (ウイルスは、各々人の体内の好きな場所がある)に更に侵入し、またそこで第二段階目の増殖し症状をひきおこします。こうして、人によって、つまり子供によって一般的な風邪として看れる患者さんもいれば、少々入院をしなければいけない患者さんまでと分けられてしまうのですが、その引き金になるポイントは、先にも記載いたしましたように、不明な点が多いです。

Nelson textbook of pediatrics 16 th editionよりNelson textbook of pediatrics 16 th editionより

2.アデノウイルスとは?そして症状は?

 アデノウイルスも約40種類以上の型があります。
 このウイルスによる夏風邪症状も、一般的な風邪症状ですが、咳がひどくなることが多いです。またウイルスの型によっては、かかった当初は、何となく風邪 症状主体でありながら、しばらくして他の症状を併発してくることがあります。例えば、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、肺炎や出血性膀胱炎などがそうです。

5.夏風邪症候群の代表的な疾患を原因ウイルスを含め、いくつか御紹介致します

1.ヘルパンギーナ

 コクサッキーウイルス(Coxsackie A1~10,22, Coxsackie B1~5)、エコーウイルス(Echo9,16,17) の異なる各種のウイルスが原因となり、突然発熱してのどが痛くなり、のどの粘膜に周囲の赤い小さな水疱や潰瘍ができます。子供は不機嫌になり、さらにのどの痛みも加わり食欲もなくなりますが、だいたい3~4日で元気になります。

2.手足口病

 多くはコクサッキーウイルス(Coxsackie A4,10,16)が原因で、時にはエンテロウイルス(Entero 71)が原因となることもあります。手のひらや足の裏、時には肘や膝の裏(おしりにまで)に水疱(小さな赤いポツポツ)ができ、口の中にもポツポツができます。ヘルパンギーナよりも症状は軽いです。
 この皮膚にできたポツポツは、時々痛みを伴うこともあります。

3.咽頭結膜熱

 アデノウイルス(Adeno 1~4,6,7,14)が原因で発熱、のどの発赤、結膜炎の3つの症状が伴います。発熱は3~4日続き、全体的には一週間位で治ります。プールを介して流行することが多いので、プール熱ともいいます。

4.流行性角結膜炎

 アデノウイルス(Adeno 8)が原因です。お風邪の症状は余り認めないため、この項に加えるには少々場違いかもしれませんが、夏場の子供に流行する疾患の一つとしてお書き添え致しました。
 結膜の充血、主張、濾胞形成が著名です。眼脂(目やに)、羞明(少々の光でもまぶしく感じる)、流涙(涙が多めにでること)、異物感 (目がゴロゴロする)を認めます。

6.『冬のお風邪』について

 代表的なものは、やはりインフルエンザウイルスによる感染症です。
 これは、単なるお風邪と解釈せず、早めに適切なる治療を受けられることをお薦め致します。

 その理由は、既に御存じかもしれませんが、非常に重度の合併症をひきおこし、それが時に致命的な結果につながるからです。では、このインフルエンザと普通のお風邪の違いを表にまとめてみましょう。

  インフルエンザ かぜ(風邪症候群)
初発症状 悪寒、頭痛 鼻咽頭の乾燥感およびくしゃみ
主な症状 発熱、全身痛 鼻汁、鼻閉
悪寒 高度 軽度で短期間
発熱と発熱期間 38~40℃ ないか、もしくは微熱
全身痛、筋肉痛、関節痛 高度 ない
倦怠感 高度 ほとんどない
鼻汁、鼻閉 後期より著しい 初期より著しい
咽頭所見 充血/扁桃腫脹 やや充血
結膜所見 充血 アデノウイルスではある
咽頭結膜熱では特にひどい
合併症について 気管支炎、肺炎、中耳炎
脳炎・脳症
病原 インフルエンザA、B インフルエンザC、パラインフルエンザ、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス

 以上が、大まかな一般的な「風邪」といわれる疾患と、インフルエンザの違いですが、乳幼児の場合は初期段階において特にインフルエンザ特有の症状(頭痛、倦怠感、筋肉痛など)が軽く、鼻水や咳がでてと「なんだかお風邪でもひいたかしら ? 」と勘違いしやすいため、注意が必要です。
 そこで、ここに簡単なチェックリストを提示致します。お役立て下さい。

チェックリスト

重要ポイント
この3つのチェックポイントがそろうことが、インフルエンザの特徴です。
・地域内でのインフルエンザの流行。
・急激な発症。
・38℃以上の発熱/悪寒

要注意ポイント
重要ポイントの他にも、次のような要注意ポイントがあれば、インフルエンザを疑いましょう。
・関節/筋肉痛。
・倦怠感/疲労感。
・頭痛。・寝込む

また、次のいわゆる「風邪症状」もほとんど同時か、やや遅れて現れます。
・咳/鼻汁/くしゃみ。
・喉の炎症

 インフルエンザを軽くみてはいけない大きな理由は、その合併症にあります。
 時には致死的な経過をたどり、後遺症も残してしまうこの感染症は、法律上も、黄熱、梅毒、AIDS 等と同じく四類感染症の一つになっています。
 改めてここにインフルエンザの合併症を列記致します。

呼吸器 中耳炎・副鼻腔炎、クループ、気管支炎、気管支喘息増悪、肺炎、肝障害
中枢神経 熱性けいれん、ライ症候群、ギランバレー症候群、脳炎・脳症、その他の精神神経症状
心血管系 心筋炎
腎不全
筋炎

 中には、今まで全く聞いたこともないような疾患があると思います。脳炎・脳症は、近年特に新聞・テレビ等のマスコミ関係でも取り上げられ、深刻な問題となっております。
 さて、このような恐いウイルスに関してどの様な対処があるのでしょうか ?
 なんといっても予防が一番、昔から「予防にまさる治療はない」と言われるように、かからないように最善をつくすことです。具体的には、外出先より帰宅したら、手洗いを行い、うがいをすること、これらはごくごく基本的なことでありますが、さらに予防接種を受けることが大切です。ワクチンの効果について色々と論議がなされておりますが、総合的な効果は50~70% の確率であるものと言われております。
 また、万が一それでもかかってしまった時には、現在、数種類の抗ウイルス製剤(インフルエンザ治療薬)がありますので、かかりつけの主治医に御相談をされ、適切な検査・診断を受け、早期に服用されますことをおすすめ致します。

7.『お腹のトラブル』について

 吐き下し(下痢嘔吐症)。急性胃腸炎(細菌性腸炎、ウイルス性腸炎)など、色々な表現があります。
 吐き下し(下痢嘔吐症)は、子供に多い症状の一つで、多くはお腹に生じたウイルス感染ですが、時に細菌感染(いわゆる食中毒)にかかっている可能性を考え治療しなければなりません。ここでは、食中毒を含めいくつかのお腹の感染症について記載いたします。御参考にしてみて下さい。

8.『細菌性腸炎』について

 発生頻度の上からは、ウイルス性下痢症が圧倒的に多いですが、細菌感染による下痢症は、時に重篤な合併症もひきおこす可能性があり、絶えずその可能性を考えなければなりません (細菌性下痢症はウイルス性下痢症と異なり、病初期に便培養検査を行うことで、比較的容易に診断が可能です)。子供は自分から決して症状を言ってくれません。「かかったかな ?」と思われたときは、以下に記載しましたチェックリストの内容を整理し、かかりつけの医師に御相談してみて下さい。

  • 下痢の回数と便の状態(一日あるいは半日で何回か? 泥状、水様、血液混じり、色等は?)
  • 嘔吐はあるか?
  • お熱はあるか?
  • 食事になにか心あたりはないか?
  • ご家族(幼稚園、保育所、学校)に同じ様な症状の人はいないか

 また、お腹の症状(いわば腹部症状)が現れるまでの時間(潜伏期)を整理する事が、たくさんある原因菌を推測するのに役立ちます。具体的には、食中毒は大きくわけると毒素型と感染型に分類されますが、潜伏期が短い場合は毒素型を、長い場合は感染型を考慮します。

潜伏期および下痢以外の症状からの原因菌の予想
潜伏期 発熱 嘔吐 原因菌
16~96時間 ★★★ 赤痢、サルモネラ、エルシニア
16~96時間 コレラ
16~96時間   ★★★ 腸炎ビブリオ
3~5日   ★★ 病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌)
1~7日 カンピロバクター
★★★:普通、★★:しばしば、:ときどき

小児内科 Vol. 31 増刊号 1999 細菌性下痢症の項目より抜粋

 以上が、簡単な細菌性腸炎に関する見分け方ですが、症状のみでは確実に疾患を確定するのは困難なため、便の培養や毒素産生性の検査が必用です。もしも、みなさんの子供が上記に記載した症状に、何となく心あたりがあれば、便をお持ちになり、かかりつけの医師に御相談され、適切な抗生剤の処方を受けて下さい。さらに以下に、各種細菌性食中毒の原因菌とその特性、代表的な症状や原因食品について記載を致します。御参考にしてみて下さい。

9.細菌性食中毒の原因菌とその特性について

原因菌 潜伏期間 症状 発症機序 原因食品
ブドウ球菌 1~6時間 激しい悪心・嘔吐 毒素型 調理者の化膿した手の傷より汚染
した食物を食べることで発症
ボツリヌス菌 12~36時間? 悪心・嘔吐、めまい頭痛、視力低下、嚥下障害
乳児型ボツリヌス症:便秘、哺乳力低下、首・手足の筋力低下
毒素型
中間型
生肉を材料とする発酵保存食品
(いずしなど)
ハチミツなど
セレウス菌 1~3時間 嘔吐性:悪心・嘔吐、下痢
下痢型:腹痛、水様性下痢
毒素型
中間型
調理後放置された米飯・焼き飯
ウェルシュ菌 8~16時間 腹痛、水様性下痢 感染型/中間型 加熱調理後放置された食品・魚介類
病原性大腸菌
病原性
細胞侵入性
毒素原性
出血性
10~30時間
10~30時間
10~30時間
2~14日間
下痢、腹痛、悪心・嘔吐
発熱、腹痛、膿粘血便
腹痛、水様下痢
水様下痢、強い腹痛
著しい血便
感染型
感染型
中間型
中間型
(ベロトキシン)
種々の食品
種々の食品
水、その他、海外渡航
牛肉、ハンバーガー/サンドイッチ、水
腸炎ビブリオ 10~24時間 激しい上腹部痛、水様下痢、発熱、悪心・嘔吐 感染型 海水魚介類、その加工品
エルシニア 16~36時間 腹痛、発熱、水様下痢、悪心・嘔吐 感染型 食肉、水
カンピロバクター 2~5日間 発熱、腹痛、下痢、血便、悪心・嘔吐 感染型 食肉、ペット、牛乳

小児科診療 92′ vol.55 Suppl. 小児の治療指針より抜粋

10.『ウイルス性腸炎』について

 先にも記載致しましたが、小児の嘔吐下痢症状の原因のほとんどが、このウイルス感染によっておこるものです。代表的なものをいくつかまとめてみました。御参考にしてみて下さい。

ウイルス性腸炎のいろいろ
ウイルス名 ロタウイルス ノルォークウイルス アストロウイルス アデノウイルス
好発年齢 乳幼児 学童年齢 小児 小児
感染経路 人から人へ 人から人へ 人から人へ 人から人へ
潜伏期(日) 1~3 1~3 1~3 1~10
発症期間(日) 3~8 1~4 1~4 7~9
症状 ・・・・嘔吐、下痢、発熱、食欲不振、脱水(共通してみられます)・・・・
慣用的な病名 冬季乳児下痢症 流行性嘔吐下痢症 なし なし
疫学 散発的 家族内、地域的 散発的 散発的
  冬季(時に小流行) 年中(冬季) 秋から冬 年中

 お風邪の項目でも記載致しました様に、ウイルス感染が原因で生じる疾患について、その治療の殆どが対症療法が中心となります。上記に記載致しましたウイルス性腸炎も例外ではありません。嘔吐に関しては、制吐効果のある内服薬や坐薬の投与を、下痢に関しては、整腸剤を含め下痢を緩和する処方を、また食欲不振や度重なる嘔吐・下痢に引き続く脱水症状には、輸液 (補液・点滴)療法を行います。
 ウイルス腸炎は、そんなに恐い疾患ではないのです。しかし、ここで大切な事は、二次的に脱水症状を招いてないか否かということです。以下に脱水に伴う子供に認める各症状を記載致しますので、これも同時に御参考にしてみて下さい。

嘔吐や下痢をしたときのSOSのサイン(脱水症状のサイン/脱水併発のサイン)

  • 顔色が青白くて呼びかけても反応がにぶく、ウトウトしているとき。
  • 目のまわりがくぼんで、唇がカサカサ。泣いても力強さがなく、涙もでないとき。
  • きげんが悪い。あやしても笑わない。いつもあまり泣かない子が、よく泣くとき。
  • 半日の内に、4~5回以上吐いてしまうとき。また、食事をしたそうだけど、受け付けてくれないとき。
  • 排便時に体をよじって激しく泣くとき。
  • 下痢の症状が軟便から水様性(水の様な下痢)の便に変わっていく。
  • 米のとぎ汁の様な白い便(黄白色)が大量に出たり、血便や粘液が混じった便が出るとき。酸っぱい臭いや、悪臭のある下利便が出るとき。

 治療をすすめる上で、また子供を看ていく上で大切なことは食事療法です。以下に上げました内容を参考に工夫をしてみて下さい。

下痢の時の食べ物、飲み物

与えてよいもの ひかえたいもの
アルカリ飲料
りんご果汁
白湯、番茶、離乳食
お粥、うどん
(離乳食は1段階前に戻してください)
脂肪製品:チーズ、バター、肉類
糖分の多い物:甘いジュース、お菓子関係、柑橘系のくだもの、炭酸飲料
乳製品:母乳は特に制限することはありません:牛乳、粉ミルク、アイスクリームなど
(粉ミルクが主食代わりの方は濃度を薄めて作ってみてください)

 以上、一般的にお父さん、お母さんがご家庭でよく認める、そして我々小児科医が、一番外来でみかける「お風邪と吐き下し」について、少々詳しく記載を致しました。
 この項で不明な点がございましたら、当科のスタッフにおたずね下さい。

11.内分泌外来から ~成長障害の外来について~

 お子さんの身長が低いのでないか?あるいは健康診断でちょっと低めですと言われて心配になって受診される方のための外来です。表には1年間に県立中央病院小児科を低身長を主訴に受診あるいは紹介された年齢の内訳を示してあります。
 3歳時健診で指摘されて受診される方が多い一方で、いつか伸びるだろうと思っているうちに中学生になって受診したという方もおられます。この中で、明らかな病的原因が見つかって治療開始されたのは66例中7例=約10%でした。つまり9割近い方は、正常な体質的低身長と言えます。低身長で受診された お子さんが本当に治療が必要な低身長なのか?あるいは体質的なケースなのかを見極めることがとても大切です。

1.受診される時には…

 母子手帳や幼稚園・保育園・学校での成長の記録があればぜひ持参ください。身長のことが気になった 時点で、なるべく早めに(できれば小学入学頃までに)受診されることをお薦めします。また風邪などで 受診された時に御相談いただいてかまいません。

2.外来で最初にすることは…

A.成長の評価
(1)SD(=標準偏差)スコアの作成

 お子さんの身長が年齢相当の平均値からどのくらい離れているかを調べます

(2)成長曲線の作成
 今までの記録をもとにグラフにプロットします

B.問診
 生まれたときの様子、これまでかかった病気、御両親の身長などを伺います

C.診察
 低身長の原因となりうる疾患を考えながら全身の診察をします

D.血液・尿検査
 貧血の有無、腎機能・肝機能・甲状腺機能など正常か内科的疾患について調べます

E.左手のレントゲン写真
 骨の発育(=骨年齢)を左手首と手指のレントゲン写真から判定します

 以上の一般検査結果は一部を除いて受診当日中に判明しますので、その日のうちに結果をお話しできます。
 これらの診察・検査結果からさらに必要と判断された場合には、次のような精密検査を一般検査と並行して、あるいは後日改めて施行します。精密検査もほとんどは外来で行っていますが、場合によっては1~2泊の入院をしていただく場合もあります。

3.精密検査の内容は…

A.染色体検査
 低身長の女児では、ターナー症候群という染色体の変異が低身長の原因である場合があります。わずかな血液から検査できますが結果がでるのには3~4週間近くかかります。ただ、この検査はプライバシーにかかわるので、必要な場合には事情を御両親に説明して了解いただいた上でとなります。

B.ホルモン検査 -特に成長ホルモン分泌負荷試験-
 小児期の発育には健康状態、栄養状況、環境因子など多くの要因が関与しますが、以下のいくつかのホルモンも成長には大変重要です。

(1)成長ホルモン・・・脳の下垂体より分泌され、最も重要な成長因子
(2)甲状腺ホルモン・・首の甲状腺より分泌され、出生直後より身体・精神発育に重要
(3)性ホルモン・・・・卵巣・精巣より分泌され、思春期の発育・二次性徴に必須
 これらホルモンの正確な分泌状態は血液検査でしかわかりません。特に成長ホルモンは1回の採血では評価できず、ある種の薬で下垂体を刺激しないと分泌状況は全くわかりません。このため以下のような検査となります。

  0’ 30’ 60’ 90’
採血 分泌刺激薬投与

 何回かの採血が必要ですが、点滴用の留置針を一旦静脈にセットしてしまえば、そこから順に採血するだけです。検査終了まではお茶や水以外の一切の食事やジュース/牛乳などカロリーのあるものは検査結果に影響するので食べれません。検査結果は1~2週以後になります。

C.頭部画像検査

 成長ホルモンの分泌が少ないと判定されたケースでは、更にMRIやCTスキャンによって特に脳下垂体 周辺に問題がないか調べます。

 以上の診察、一般検査、精密検査を総合的に判断して何らかの病的原因はあるのか、また治療が必要なのかを判定します。ただ、初回の受診で問題なしと判定された場合でも、年に1~2回の定期診察は必ずうけるようにしてください。初めにははっきりしなかった問題が後になって明らかになる場合もあるからです。

 成長の評価や低身長の原因疾患、また成長ホルモン治療について更に詳しく知りたい場合には以下のリンクをお薦めします。

4.お子様の低身長でお悩みのお父様・お母様へ
 大阪の野瀬先生という小児内分泌専門の先生のホームページで、低身長に関する詳しい医学情報が多く掲載されています。
野瀬クリニック

5.もみの木クラブ
 低身長についての検査の流れについて詳細に紹介されていて、全国の専門病院も掲載されています。ちなみに富山県からは当院小児科が紹介されています。
もみの木クラブ


12.アレルギー外来より ~アレルギーとは~

 人間の体は例えば細菌やウイルスなどの異物が入ってくると免疫反応が働き、これらを体の外へ排除しようとします。しかし、このような免疫反応が過剰におきて体にとって不利益を及ぼす場合はアレルギー反応といいます。ダニ・花粉・食物などが原因でおきる気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、蕁麻疹などはアレルギー性疾患と言われています。

1.気管支喘息

 近年気管支喘息は他のアレルギー性疾患同様に増加傾向にあるといわれています。この原因としては家屋構造・生活様式の西洋化により、環境中のダニが増えたり、卵などの蛋白質を早期から多量に摂取するようになったりした事、また大気汚染や精神的ストレスなどが増加した事等が考えられます。喘息児の気管支は炎症をおこしており、いろいろな刺激(煙、気温や気圧の変化、感染、運動、精神的なストレスなど)に対し、過敏に反応して細くなり呼気性の呼吸困難(喘鳴)を生じます。このような喘息発作をおこすとさらに気管支の粘膜の炎症は悪化し悪循環に陥ります。
 小児喘息の治療の目標は、喘息の症状がなく、日常生活が健常児と同じように過ごせることです。特に短期間に何度も発作を繰返す場合は発作の治療も大切ですが、発作が起こらないように予防する事が重要です。このような地道な治療をする事で小児喘息の6から7割は思春期に寛解すると言われています。具体的に治療は、環境整備、鍛練療法、薬物療法からなります。

A.環境整備
 喘息児ではアレルギー体質のある児がほとんどですから、アレルギーの原因となるダニ、カビやペット対策が重要です。それに加え、受動喫煙を含めた室内空気汚染への配慮が必要です。これらをおろそかにしてはいくら強い薬を使っても喘息発作のコントロールができません。

B.鍛練療法
乾布摩擦や冷水かぶりなどの皮膚の鍛練は、自律神経の鍛練につながります。運動療法としては、水泳が有名ですが、喘息児自身がやりたいもので発作の誘発がなければどんなスポーツでもよく、継続することが大切です。また、日頃から腹式呼吸や排痰法を身につけ、発作時直ぐにできるように練習しましょう。

C.薬物療法
 喘息の治療薬には気管支拡張剤、去痰剤、抗アレルギー剤およびステロイド剤などがあり、それぞれ内服、吸入および注射で使用されます。最近では気管支拡張剤の貼り薬も発売され、患者さんの病状に合わせて単独または組み合わせて使用されます。特に吸入薬は直接気管支に到達するため、少量の薬で効果が早くでて、副作用も少ないため最も治療に適した薬剤といえます。喘息では慢性的、持続的に気管支粘膜に炎症がおきることから、小児でもこの炎症を抑える治療が主体となってきました。ただし、小児では抗炎症作用のあるステロイド剤は成長に影響を及ぼす可能性があることから喘息の発作の程度・頻度により適切に使用する必要があります。これらの薬を使って喘息発作を速やかに鎮静化し、発作のない期間を長く維持することが重要です。喘息は慢性の病気なので症状がおさまったからといって勝手にすぐ薬を中止してはいけません。必ず医師の指示に従って下さい。

2.アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎とはアレルギー体質を持っている人におきる、慢性に経過する痒みを伴う湿疹です。湿疹は年齢により出現する部位が変わり、一般的には乳児はジュクジュクし、幼児、年長児はカサカサした皮膚となりますが、赤ちゃんにできる乳児湿疹とは異なり簡単には治りません。
アトピー性皮膚炎の原因としては、(1)食物・ダニなどによるアレルギー反応と、(2)皮膚内の脂質の減少による乾燥(ドライスキン)とそれに伴う防御機能の低下など皮膚自身の要因とがあります。アトピー性皮膚炎の増悪因子は多種多様であり、各個人でも大きく異なります。アトピーだから卵を食べてはいけないと短絡的に考えて食事制限を行うと、子供の成長に悪い影響を与える事もあります。

アトピー性皮膚炎

 治療としてははっきりとした原因があればダニや食物などの原因を除去する事が重要ですが、悪化因子を取り除くスキンケアも非常に大切です。

A.スキンケア
 アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下していますから、その部分にほこり・汗・衣類・石鹸・洗剤・ダニ・細菌などの刺激物や異物が接触すると皮膚の炎症をおこします。入浴やシャワーなどで汗や汚れを石鹸で洗い流し、さらに石鹸が残らないようによくすすぐことが重要です。その後で乾燥しないうちに保湿剤を塗布します。これを皮膚の状態に合わせて一日に2~3回行うと効果的です。

B.薬物療法
 皮膚の炎症が強い時はステロイドホルモンの外用薬を用い、炎症を抑えることで皮膚の状態を改善させます。ステロイド剤には作用の強さにより5段階に分けられますが、湿疹の程度・部位・広がりなどに応じて適切に使い分ける必要があります。ステロイド剤の害ばかりが強調されますが、定期的に外来受診し適切に使用されれば副作用が現れることはまずありません。また、かゆみが強い時はかゆみ止めの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服を併用することがあります。
 気管支喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患は慢性疾患であり、短期間で容易には治りません。しかし、長期的視野を持って根気強く治療を継続することで病気を治癒へ導くことが可能と考えられます。

 当科外来では問診、血液検査(アレルギー検査)、レントゲン検査、呼吸機能検査、鼻汁検査などからアレルギー性疾患を的確に診断し、各々の患者さんの病状に合わせて最良の治療を行うよう努力しています。ご不明な点があれば外来にてご相談ください。

13.循環器外来より ~小児心疾患の最近の進歩について~

1.小児心疾患のカテーテル治療

肺動脈弁狭窄症に用いられるバルーンカテーテル 小児の心疾患に対する治療方法は従来、手術しかありませんでしたが、十数年前からカテーテルによる治療が行なわれるようになり、現在ではなくてはならない治療手段となっています。心臓カテーテル治療とは、鼠径部(足の付け根の部分)の血管から心臓カテーテルとよばれる細い管を心臓まで入れ、その心臓カテーテルによって心疾患を治療するものです。この治療方法の一番の利点は、心臓手術と違って胸に手術の傷跡が残らないことです。また、患者さんの肉体的苦痛も手術よりはるかに少なく、入院期間も4~5日と短いのが特長です。そして、心臓カテーテル治療による治療効果は手術となんら変わりません。このように、カテーテル治療は多くの長所、利点を持った治療方法であり、当院小児 科でも以前より積極的にカテーテル治療にとりくんできました。しかし、このカテーテル治療が可能な疾患は限られています。今のところカテーテル治療が行なわれている心疾患は、肺動脈弁狭窄症、動脈管開存症、大動脈縮窄症、大動脈弁狭窄症、肺動脈狭窄などです。近いうちに心房中隔欠損症に対してもカテーテル治療が可能になると思われます。このようにカテーテル治療ができる疾患は限られていますが、今後カテーテルの装置の工夫により、カテーテル治療が可能となる疾患はどんどん増えていくものと思われます。
図は肺動脈弁狭窄症に用いられるバルーンカテーテル。
先端のバルーン(この場合は2つ)で、狭くなっている肺動脈弁を広げ、治療します。
※図は肺動脈弁狭窄症に用いられるバルーンカテーテル。先端のバルーン(この場合は2つ)で、狭くなっている肺動脈弁を広げ、治療します

2.小児心疾患の胎児診断

 近年、胎児の心臓に対する心エコー検査(超音波検査)が普及し、当院小児科においても積極的に取り組んでいます。この胎児心エコー検査により心疾患が出生前に診断されるようになってきました。全ての心疾患が出生前に診断できるわけではありませんが、生まれてまもなくの新生児期や乳児期に手術が必要となるような心疾患の多くが胎児心エコーで診断が可能です。近年、新生児、乳児の先天性心疾患に対する外科手術の進歩にはめざましいものがあります。このようななかにあって、できるだけ多くの心疾患児を救命するには、出生前からきちんと診断をし、適切な周産期管理をし、出生後は速やかに専門の小児循環器医が適切な治療を開始する、そしてできるだけ良い状態で心臓手術へ臨むことが重要になってきています。従って、胎児期に正確に心疾患の診断をし、早期に治療方針を決定することがたいへん大切となっています。
 また、胎児の不整脈も胎児心エコー検査で診断が可能です。胎児の不整脈には脈が速くなるもの、遅くなるものがあります。このような不整脈に対し、母体に抗不整脈剤を投与し、母体から胎児に抗不整脈剤を移行させ、胎児の不整脈を治療する方法があります。また、どうしても胎児の不整脈をコントロールすることができず、心不全(心臓の動きが鈍くなる)が出現した場合には早めに帝王切開をし、児を娩出し、生まれた新生児に対し直接不整脈の治療をすることもあります。

3.不整脈に対するカテーテル治療

 近年、不整脈に対するカテーテル治療が小児においても行なわれるようになり、当院でも積極的に施行しています。心臓カテーテルとは上述したとおり、鼠径部(足の付け根の股の部分)から入れる細い管 で、血管を通して心臓まで入れていきます。その心臓カテーテルにより、心臓の中の不整脈の原因となっている心筋組織を修飾し、不整脈を治療します。上室性頻拍、心室頻拍などの脈が速くなる不整脈に有効な治療手段となっています。不整脈があるため、抗不整脈剤の内服が必要である、あるいは学校での運動制限が必要である、などといった場合、このカテーテル治療により不整脈が完治し不整脈から解放されることもよく経験されます。そういった点で、カテーテル治療は画期的な治療法といえめす。また、先天性心疾患の手術後にもしばしば不整脈が発生することがありますが、このような術後の不整脈にもカテーテル治療は有効です。

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