富山県立中央病院

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呼吸器外科

概要

 当科では当院の基本理念である“ やさしさ・信頼・安心” をふまえて、がん診療連携拠点病院として最新の医療技術と豊かな経験を元に患者さんの診療にあたっています。
 当科で扱う器官とその主な疾患は、下記の通りです。

  • 肺、気管・気管支:肺癌、肺腫瘍、肺嚢胞症、自然気胸、膿胸
  • 縦隔、胸壁、横隔膜:縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、胸膜腫瘍、漏斗胸
  • 胸部外傷
  • 甲状腺:甲状腺癌、甲状腺腫、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症

 当科では原発性肺癌の手術を年間130例、転移性肺癌、縦隔腫瘍、気胸などに対する胸部外科手術を含めると220例の手術を行っています。また甲状腺、副甲状腺手術は80例程度で、その他にも気管支ステント留置術などの手術も含めると当科としては全体として年間約330例の手術を行っています。
 肺癌手術に対しては低侵襲の胸腔鏡手術を中心に行っています。すりガラス影に代表されるいわゆる早期肺癌に対しては肺機能の温存と肺癌の根治を両立した肺解剖学に基づいた肺区域切除を、また標準術式であるリンパ節郭清を伴う肺葉切除に関しても創が小さく痛みの少ない完全鏡視下手術を行うことで術後の疼痛軽減、早期離床、早期退院を実践しています※。特にCTで初めて発見された「スリ硝子様陰影」は根治の可能な早期肺癌である場合が多く、可能な限りの肺機能が温存されなければなりません。 そこで当科では、肺解剖学に基づいた区域切除を胸腔鏡で行い、癌の根治と肺機能の温存を両立させています。
 一方で周囲組織浸潤を伴う進行肺癌に関しては呼吸器内科や放射線科とも協力し、術前化学療法や放射線療法などを駆使して癌病巣の縮小に努めることで手術の適応を模索し、拡大手術も含めて可能な限り手術による摘出を目指します。
 さらに術後は病理診断の結果を十分に検討し、必要に応じて術後補助化学療法を行うことで癌の根治性を高める努力をしています。
 術後の再発時には気管支鏡や胸腔鏡を用いて積極的に再生検(セカンドバイオプシー)を行い、病変の性状に応じた薬剤選択も行っています。
 また当科では種々の原因による気道 狭窄に対する気管・気管支ステント留置術を中心とした肺や気管支病変に対する気管支インターベンションを積極的に進めています。各種原因による気道の狭窄に対して硬性気管支鏡を用いて狭窄を解消し、そこにシリコンステントを留置して呼吸の苦しさを改善させる治療です。 特に患者さんの状態に会わせてシリコンステントを作成していることが当科の特徴です。
 県内で最多となる3名の呼吸器外科専門医が常勤で在籍しておりますので、いずれの診療についても十分な多面的検討の元に確かな技術とチーム医療にて当たっております。

 上記以外にもがん診療連携拠点病院、地域中核病院としての責任を全うすべく最新の医学知識と技術を持って誠心誠意、治療を行っていますので今後ともよろしくお願い致します。
 ※2015年度の実績では、完全鏡視下手術を84%の患者さんに行いました。また術後の平均在院日数は4.8日でした。

診療担当表

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
1診 宮澤 宮澤 担当医 宮澤 新納
2診 伊藤/新納 伊藤

手術日…月、水、金
検査(気管支内視鏡)…月、水、木

医師紹介

医師名・職位 専門分野 資格
部長 宮澤秀樹 部長
宮澤 秀樹
(みやざわ ひでき)
呼吸器外科全般、胸腔鏡手術、膿胸、気管支鏡治療(気管支インターベーション) 日本外科学会専門医・指導医
日本胸部外科学会指導医
日本呼吸器外科学会
  専門医・指導医、評議員、地域インストラクター
日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医、評議員
日本内視鏡外科学会評議員
日本肺癌学会
医長 伊藤祥隆 部長
伊藤 祥隆
(いとう よしたか)
呼吸器外科全般、胸腔鏡手術 日本外科学会認定医・専門医・指導医
呼吸器外科専門医合同委員会認定呼吸器外科専門医
日本呼吸器外科学会評議員
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医
日本臨床外科学会評議員
日本気胸・嚢胞性肺疾患学会評議員
日本肺癌学会北陸支部会評議員
北陸肺癌談話会世話人
肺がんCT検診認定機構肺がんCT検診認定医師
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ICD制度協議会インフェクションコントロ-ルドクタ-(ICD)
米国心臓協会 ACLS プロバイダー
医長 新納英樹 医長
新納 英樹
(しんのう ひでき)
呼吸器外科全般、救急医療、胸腔鏡手術 日本外科学会専門医
呼吸器外科専門医合同委員会認定呼吸器外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本プライマリ・ケア連合学会認定プライマリ・ケア認定医
日本 DMAT 隊員
臨床研修指導医
日本胸部外科学会
日本内視鏡外科学会
日本肺癌学会
日本甲状腺学会
米国心臓協会 BLS インストラクター
米国心臓協会 ACLS インストラクター
日本救急医学会認定JATEC プロバイダー
米国救急医学会・救急医協会認定ITLS インストラクター
医師
中田 翔
(なかた しょう)
呼吸器外科

呼吸器外科を初診で受診される患者さんへ

どのような症状ですか?
1. 咳が止まらない。血痰が出る。息をするときに胸が痛む。
 →このような症状の方は呼吸器内科の受診を勧めます。
2. 検診で胸の異常影を指摘された。
 →当科にて精密検査を致します。
3. 事故やけがで胸を打って痛む。
 →当科にて肋骨骨折の有無を調べます。
4. ある日突然胸が痛くなり、呼吸が少し苦しくなった。
 →当科にて気胸や肋間神経痛を調べます。
5. 頚部が腫れぼったくなってシコリがふれるような気がする。
 →当科にて甲状腺疾患の有無を調べます。
6. 乳房にシコリがあるように思える。
 →このような症状の方は外科の受診を勧めます。
7. 脇の汗が臭い。
 →このような症状の方は形成外科の受診を勧めます。
上記以外の方は、外来窓口受付の外来師長に気軽にお尋ねください。

当科での施設認定 当科医師認定
日本外科学会認定施設
日本胸部外科学会認定施設
日本呼吸器外科学会認定施設
日本気管支学会認定施設
日本外科学会専門医、指導医
日本胸部外科学会指導医
日本呼吸器外科学会専門医、評議員
日本気管支学会指導医、評議員
日本内視鏡外科学会評議員

治療について

1.肺癌に対する胸腔鏡下肺区域切除術

 肺癌に対する標準術式は現在も肺葉切除とされていますが、近年CT検診などですりガラス様陰影で発見される小さな肺癌が増加しており、これらの病変に対してはより肺の機能を温存した手術として区域切除術が行われる傾向にあります。
 区域切除は葉切除に比べると切除範囲は小さいですが、血管や気管支のより細かな解剖学的理解が必要であると同時に技術的な面でも難易度は上がります。しかし身体の負担は葉切除に比べると軽く、当科では積極的に行ってきました。
 従来は標準開胸術でも行っていましたが、近年の胸腔鏡手術の普及によりさらに身体の負担を軽減すべく胸腔鏡下に区域切除を行っています。一方、疾患によっては従来の開胸法が安全でより良い場合もあります。手術が安全に行われて初めて患者さんが恩恵に浴すると考えています。
 鏡視下手術のメリットとデメリットを十分に理解され、手術を受けられることをおすすめします。
肺葉切除と区域切除
右肺S2のすりガラス陰影/S2に入る気管支/S2から流出する肺静脈/肺実質を超音波メスで切離

2.気道狭窄に対するステント治療

 悪性腫瘍やその他の疾患で気管・気管支の気道狭窄が起こると、頑固な咳や血痰、ひいては著明な呼吸困難が生じます。
 一時的にせよそのような患者さんの症状を緩和するために気管・気管支にシリコン製または金属製のステント(筒)を挿入し、狭くなった気道を拡張します。
 当科ではシリコンステントを様々な気管支の形状に合わせて作成し、良好な気道開通と自覚症状の改善を得ています。またシリコンステント留置後の管理においても、ステント内部に付着する痰で再度狭窄症状を来たすことが問題視されていましたが、当科では日本ではじめてステント内部に付着した痰の除去に有効な吸入薬を発見し導入してきました。患者さんの命に関わる治療なので十分なインフォームドコンセントのもとに、迅速に確実に治療を行っています。
気道狭窄に対するステント治療

3.自然気胸

1.症状

肺が何らかの原因でパンクした状態 肺が何らかの原因でパンクした状態です。パンクした肺から漏れた空気は胸の中(きょうくうない胸腔内)に溜まり肺を圧迫し縮めます。その縮み具合により軽度から重度の呼吸困難が生じます。また、パンクしたときに胸部が「キュッと」痛みその後も持続的な鈍い痛みが続きます。
原因:パンクした部分は肺が小さい風船の様に変化(医学上はブレブまたはブラと呼びます)しており、若年者(10歳代から20歳代)では不明ですが中高年者では喫煙が原因の一つと考えられています。

2.診断

 医療機関にて胸部レントゲン写真で診断が可能です。胸部CTが撮って得れば更に治療に役立ちますが、必須ではありません。

3.治療

軽度(Ⅰ度)/中等度(Ⅱ度)/高度(Ⅲ度) 肺の縮み方にもよりますが、非常の軽度の場合は入院の必要もなく自宅で安静にして頂くだけで治癒する場合があります。中等度以上の場合は、入院して頂き胸腔ドレーン(柔らかい排気用の管)を挿入し、胸腔内の空気を排出しなければなりません。胸腔ドレーンとは直径6mm程度の柔らかい管を局所麻酔(管を入れる部分に麻酔をして痛みを取る)をして胸の中に入れます。胸腔内の空気がうまく外に排出できれば自覚症状が改善します。約70%の方はこの治療にてパンクした部分が閉鎖され治癒します。但し、パンクの原因となったブラはそのままなので50%の方に再発が認められます。

肺嚢胞(ブラ)自動縫合器で切除

 胸腔ドレーンにてもパンクの治らない方や再発された方は状況が許せば手術の適応となります。
手術は原則的に胸腔鏡手術でパンクしたブラを切除します。手術後は1両日で胸腔ドレーンを抜去して2~3日で退院が可能です。手術後1週間は激しい運動や、労働は控えて頂きますが、一般的な就学、就労は可能です。また、シャワーも可能です。
 一方、種々の合併症や高齢などで手術が出来ない場合は、パンクしているブラに通じる気管支にシリコン製の栓をして治す治療を試み、良好な結果が得られています。

4.巨大肺嚢胞症

1.症状

巨大肺嚢胞 自然気胸でお話しした肺の風船(ブラ)が非常に大きくなり、正常肺を圧迫してしまった状態です。この疾患はごく一部の症例を除けば、全ての症例で喫煙と関係があると考えていいかと思います。中年にさしかかる頃から階段昇降時や労作時の軽い息切れから発症します。中にはパンクして気胸になる場合もあります。
 多くの方は、職場などの健康診断の際の胸部レントゲン写真で指摘される場合がほとんどです。
 初期にはほとんど自覚症状がないために指摘されても気になりませんが、そのまま喫煙を続ければ確実に進行し、高度の場合は片肺のほとんどがブラになってしまう場合があります。
 また、風邪などの感染をきっかけとして、ブラの中が細菌やカビで感染しその中に膿が溜まる(感染性肺嚢胞)状態になってしまう場合もあります。

2.治療

 まず最初に禁煙が必要です。禁煙にて進行を抑えることが出来ます。胸部レントゲン写真で片肺の約1/3以上の大きなブラに進行すれば、外科的に切除することを勧めます。感染が起こった場合は手術が確実な方法ですが、なかなかやっかいな手術でありそうなる前に手術することが理想です。
 手術方法は、胸腔鏡下で大きな肺嚢胞を切除しますが、場合によっては小さな開胸が必要になります。感染した場合は大きな開胸手術で肺葉切除が必要になる場合があります。健康診断や職場の検診で大きな肺嚢胞を指摘された場合は、当科の担当医師に相談してください。

巨大肺嚢胞症巨大肺嚢胞症

5.肺癌の手術

末梢型肺癌/中枢型肺癌 肺癌はその発生部位により大きく2種類に分かれます。一つは末梢型肺癌といい肺の末梢にできる肺癌で多くは胸部レントゲン写真で発見されます。もう一つは中枢型肺癌といい太い気管支や気管にできてレントゲンでは発見しにくく頑固な咳や血痰で発見されます。肺癌の手術はその発生部位により異なります。

1.麻酔

 全身麻酔で特殊な気管内挿管チューブを使い左右別々に呼吸させます。つまり、右側の肺の手術時には右肺は呼吸を休み左肺だけで呼吸をしていることになります。そうすることで安全に確実に右肺の手術ができます。

2.開胸法

 胸の皮膚を切開し、胸の筋肉を切断し、肋骨と肋骨の間から胸の中(きょうくう胸腔)を観ることを開胸と呼びます。その方法にもいろいろありますが、主に後側方切開、腋窩切開、胸骨縦切開、胸腔鏡併用ミニ開胸があります。
A.後側方切開開胸:呼吸器手術の標準開胸
B.腋窩切開開胸:比較的小さい腫瘍の時の開胸
C.胸骨縦切開開胸:腫瘍が大きな血管などに浸潤しているときの開胸
D.胸腔鏡併用ミニ開胸:胸腔鏡で手術を行う時の補助を行う開胸

3.肺切除術式

区域切除/肺葉切除/気管支形成術1/気管支形成術2A.部分切除
B.区域切除
C.肺葉切除
D.気管支形成肺葉切除
 以上の開胸方法と術式は、肺腫瘍の部位や大きさ、さらには患者さんの呼吸機能を含めた体の状態を十分に検討して決定します。当科では、最も身体への影響が少なくかつ腫瘍を根治できる方法を考えています。

6.甲状腺と外科治療

1.甲状腺癌

 甲状腺にも癌が発生することがあります。見つかる動機は、気管前面の膨らみやしこりです。この膨らみやしこりは、頚部エコー(超音波)検査でよりはっきりと大きさ、位置を確認できます。
診断には、吸引細胞診を行います。これは、しこりの部分めがけて細い針を刺し、細胞を吸い取ってくるものです。この吸い取った細胞の形を見て、癌かどうか診断をします。

右葉に限局した癌と甲状腺の切除範囲 治療は、手術切除が最も効果的です。癌が限局的である場合、正常な甲状腺組織を残しながら切除します。甲状腺癌は、他の癌と比べて悪性度が低く予後がよく、手術により完全治癒を得られる可能性非常に高い癌ですが、大きな癌や転移のある場合は放射性ヨード治療を行います。甲状腺ホルモンはヨードを材料として作られており、甲状腺より発生した癌もヨードを取り込む性質を持っています。そこで、放射能を持つヨードを投与することでそれらが癌細胞に蓄積され、選択的に中から癌細胞を消滅させます。

2.甲状腺腺種

 甲状腺が結節性に腫大します。原因は様々ありますが、重要なのは甲状腺ホルモンの機能・分泌量に通常異常を認めず、したがってホルモンの多少による症状はありません。
 腺腫であることが確実であれば、特に治療の必要はありません。しかし実際は、手術を行うことがあります。腺種が巨大になり、美容上の必要性がある場合もありますが、最も重要なことは癌との鑑別です。癌のところで述べましたが、癌の診断は吸引細胞診を行います。しかしこの方法は時に癌細胞を吸引しそこなうことがあり、診断を誤ることがあるのです。確実な診断には、手術で摘出して組織診断をしなければいけません。そこで甲状腺の腫大が認められた場合、触診やエコーでの所見、腫大の程度などを総合的に判断し、癌か腺種かを鑑別します。癌である疑いが少しでもある場合は手術で切除し、確実な診断と治療を行うことになります。

3.甲状腺機能亢進症

甲状腺亜全摘 症状として、体重減少(食欲が増進し代謝亢進を上回り体重増加となるときもある)、手の震え、眼球突出、多汗、神経過敏、動悸、下痢、月経過少、脈が早くなったりします。
 甲状腺ホルモンの量は、脳の下垂体というところから出る甲状腺刺激ホルモンにより調節を受けており、甲状腺にある受容体を介して行われます。この病気では、はっきりとした原因は不明ですが、この受容体を刺激する物質(これを自己抗体といいます)が現れ甲状腺が腫大し、必要以上に甲状腺ホルモンが出てしまいます。
 治療は、薬によるものが第一選択です。薬で十分にコントロールできればそれでよいのですが、薬の副作用が出てしまう場合は薬を中止せざるを得ません。薬の効果が不十分で、症状がおさまらないこともあります。また、この病気は妊娠に大きな影響があります。その上、母体に投与された抗甲状腺剤やヨード剤なども胎盤を通過しますので、薬の投与が難しくなります。この病気では甲状腺が腫大してくるので(50gから大きいものだと200g)、首の前面に位置することから美容上の問題も出てきます。このような時、手術の適応となります。
 手術は、甲状腺亜全摘を行います。「亜全摘」とは、全体の切除ではなく一部を残す(実際には5~15g程度)という意味です。甲状腺ホルモンは基礎代謝に関連するホルモンですから、適量を残して脳下垂体の調節下に甲状腺ホルモンが分泌されるように調節するのです。

4.甲状腺手術の実際

甲状腺手術 甲状軟骨と胸骨のほぼ中央を、皮膚割線に沿って3~5cmほど切開します。 甲状腺摘出法は疾患により異なります。
術後は、皮膚を吸収糸にて埋没縫合(表面から糸が見えない縫合法)したあと、保護テープで表皮をあわせるように固定します。
 また、浸出液や血液の貯留を防ぐため、径5mmのドレーンを留置する場合があります。
 保護テープは術後5日目で外し、それに伴い毎日の手術創の消毒が不要となります。その後約3ヶ月は手術創が目立ちにくい肌色テープで創を覆い、ケロイドの発生を予防します。
 入院期間は、およそ一週間です。

5.手術に伴う合併症

 ほとんどの方が、合併症を伴わず退院されますが、まれに以下のような合併症が見られる場合があります。

A.テタニー:低カルシウム血症に伴う、種々の症状をいいます。手先など末梢のしびれ、けいれんが見られます。甲状腺の両葉上下極裏側には副甲状腺という器官があり(詳しくは次項参照)、甲状腺摘出に伴い副甲状腺の血流が一時的(約3ヶ月)傷害されると、低カルシウム血症を来たします。これらの症状に対して、血中カルシウム濃度を上げる薬を予防的に処方します。

嗄声
B.嗄声:甲状腺の両側を、反回神経という声帯を動かす神経が通過しています。手術時、この神経を損傷・切断したり、術後の周辺組織のむくみから神経が圧迫されると、声が枯れたり出にくくなったりします。完全な切断でない限り、徐々に回復します。

7.副甲状腺の疾患

1.副甲状腺

副甲状腺 副甲状腺は、多くの人では4つあります。各々の大きさはせいぜい米粒の2~3倍と、大変小さな臓器です。場所は、甲状腺と気管の間に挟まれるような格好で位置します。重さは、4つ合計しても100mg足らずです。この臓器は「副甲状腺ホルモン」というホルモンを分泌します。このホルモンは血中のカルシウム濃度を調節する役目を担っており、カルシウム濃度を上げる働きを持ちます。

2.原発性副甲状腺機能亢進症

 副甲状腺から必要量以上の副甲状腺ホルモンが分泌される結果、高カルシウム血症を来たします。症状は、精神症状として倦怠感・情緒不安定、腎症状として、多飲・多尿、尿路結石、骨の症状として線維性骨炎、骨脆弱化と、実に多岐にわたります。
 副甲状腺の腺種、過形成、癌である場合があります。原因は、はっきりしているもの、不明なものとあり、鑑別するための検査が必要です。全てにおいて、高カルシウム血症を認め、血中の副甲状腺ホルモンが異常高値を示します。また、頚部エコーやCTで副甲状腺の腫大を確認します。時に、本来あるべき場所以外に副甲状腺が存在することもあり、その場合は副甲状腺に特異的に取り込まれる放射性物質(MIBI)を全身投与し、その集まる部位を調べることで場所を同定します。

3.二次性副甲状腺機能亢進症

 特に慢性腎不全の患者さんで多くみられます。腎臓は、血中カルシウム濃度を保つための大変重要な働きを担っています。腎臓が機能しなくなる慢性腎不全の状態ではその機能が失われ、血中カルシウム濃度が下がります。その為副甲状腺が反応性に腫大し、大量のホルモンを分泌します。副甲状腺ホルモンは骨に作用し、骨の破骨細胞(骨を溶かす細胞)の働きを促すことで血中のカルシウム濃度を上げようとするので、かえって骨をもろくするという悪影響を及ぼします。

8.スリ硝子様陰影に対する治療

スリ硝子様陰影
 スリ硝子様陰影とは、写真の矢印に示すように肺野末梢の小さくて淡い孤立性の病変を指します。このような病変は一般の胸部レントゲン写真には全く写らず、CTではじめて発見されます。CTを撮る動機も、他疾患の経過観察や診断で撮ったCTで偶然に発見される場合や、CT検診(ドックを含む)の場合がほとんどです。この陰影は早期の肺癌である可能性が非常に高く、注意深い経過観察が必要であり、約半年の経過観察にて陰影の変化がない場合は切除による確定診断を勧めます。
スリ硝子様陰影 手術は肺機能温存と癌の根治を目的とした胸腔鏡下区域切除を原則としており、術後約1週間での退院が可能です。昨年度は約20例のスリ硝子様陰影に対し手術を行い約9割の18例が肺癌でした。

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