富山県立中央病院

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卒後臨床研修評価機構 (JCEP)認定

日本医療機能評価機構認定証

精神科

概要

総合病院にある精神科として、精神疾患全般の診断と治療を行っています。精神科の初診では診察に時間をかけています。そのため、待ち時間が長くなることがあります。特に、紹介状をお持ちの方が優先となりますので、紹介状をお持ちで無い方はお待たせすることがある事をご了承下さい。なお、紹介状をお持ちで無い方もご相談にこられたその日の内になるべく診察するように努めています。初診の受付時間は、9時~11時となります。ただし、緊急を要する場合にはその限りではありませんので、電話にてご連絡下さい。
対象疾患としては、発達障害、統合失調症、双極性障害、うつ病、適応障害、不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、解離性障害、身体症状症、摂食障害(拒食症、過食症)、睡眠障害(不眠症など)、認知症、パーソナリティ障害などです。年齢は小学生の方から高齢者の方まで対応しています。最近では、児童思春期、摂食障害、周産期のメンタルヘルスの問題(産後うつ病など)などの方が受診されることも増えています。お悩みをお持ちの方は気軽にご相談下さい。

2022年度の診療状況としては、初診外来患者総数は1480人でした。初診患者を主な疾患別に見ると、認知症・せん妄など646人、アルコール・薬物依存症26人、統合失調症48人、うつ病・双極性感情障害(躁うつ病)240人、不安障害・パニック障害・適応障害など310人、摂食障害(拒食症、過食症)・睡眠障害109人、パーソナリティ障害6人、発達障害など60人、その他35人でした。
精神科救急診療としては、2022年度に救命救急センターで精神科として対応した患者数は336人でした。
精神科病棟は2011年3月21日に新築された東病棟の3階に移り、開放と閉鎖の2病棟80床から、閉鎖病棟のみの50床に変わり、同年9月より精神科救急入院料算定病棟となりました。さらに2017年11月より、精神科救急合併症入院料算定病棟となりました。入院治療はより短期間(標準的な入院治療期間を8週間に設定)で、しかも再発・再入院を防ぐために、薬物療法や個人精神療法に加えて、精神科急性期リハビリテーションとして患者心理教育、作業療法を行っています。医師、看護師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士、薬剤師などの多職種がチームとなって退院支援を行うとともに、早期の退院と退院後の安定化を目的に退院前訪問指導と精神科デイケアを行っています。

診療担当表

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
1診(初診) 大口 野原 福井 米澤 麻生
午前2診(再診) 福井 麻生 野原 福井 大口
午前3診(再診) 米澤 大口 瀬尾 麻生 野原
午後2診(再診) 瀬尾 麻生 野原 福井 米澤
午後3診(再診) 米澤 大口 瀬尾 麻生 野原

初診(1診) 9:30~午前のみ
再診(2、3診) 9:30~午後も診療

医師紹介

医師名・職位 専門分野 資格
部長 野原茂 部長
野原 茂
(のはら しげる)
精神科全般
不安障害
パニック障害
医学博士
精神保健指定医
精神保健判定医
日本精神神経学会専門医・指導医
部長
米澤 峰男
(よねざわ みねお)
精神科一般 精神保健指定医
総合病院精神科医学会専門医指導医
医長 瀬尾友徳 部長
瀬尾 友徳
(せお とものり)
精神科全般 医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
医長
大口 善睦
(おおぐち よしむつ)
精神科全般
副医長
福井 琢也
(ふくい たくや)
医師
麻生 義和
(あそう よしかず)
医師
森田 達也
(もりた たつや)

日常の診療

1.うつ病の治療

当院では思春期のうつ病や、産後のうつ病の方も多く来院されます。また重症例では電気けいれん療法などもおこなっています。当院では2020年から2023年の4年間で、23例に計215回の修正型電気けいれん療法の施行実績があります。

2.統合失調症の治療

当院では治療抵抗性統合失調症に対して、クロザリル(クロザピン)による治療を行っています。2024年度では3例の導入実績があります。

3.不安障害の診断と治療

不安と動悸、呼吸苦などがパニック発作でもみられ、抗うつ薬を中心とした薬物療法が有効です。

4.認知症の初期診断・治療

当院には3台のMRI(3テスラ装置2台と1.5テスラ装置1台)と2台のRI検査機器(脳血流シンチグラフィー、MIBG、DAT)があり、アルツハイマー病、レビー小体型認知症等の早期診断が可能です。また当院の認知症看護認定看護師は、物忘れ相談窓口での相談対応も行っています。

5.身体疾患に合併する精神科的疾患(せん妄等)の診断・治療

当院には4名の認知症サポート医の資格を持つ医師が在籍し、認知症看護認定看護師とともに認知症ケアチームとして、せん妄や認知症に関連した行動障害に対応しています。認知症サポート医以外の医師も、当院の精神科及び各科の病棟の認知症患者を診療し、薬物療法とユマニチュード等の心理療法的な介入を行っています。他の診療科と連携し、1名の精神科医が公認心理師とともに緩和ケアチームに関わっています。また当科では、2名の精神腫瘍学指導者が、当院研修医や他院のがん診療に携わる職員対象の心理ケアのトレーニングプログラム(緩和ケア研修会)にファシリテーターとして参加しています。

6.摂食障害(特に低栄養の神経性やせ症)

神経性やせ症(anorexia nervosa)では、ボディイメージのゆがみがみられ、明らかな低体重・低栄養状態にも関わらず、患者はその重篤さを認識できません。10〜20代の女性が多く罹患する疾患で、学業や仕事の能率の低下もみられるだけでなく、死亡率は6~20%で、他の精神疾患より高く、極度の低栄養に起因する衰弱死、不整脈、感染症、自殺などが主な要因とされています(摂食障害情報ポータルサイトより)。個人や家族だけでなく、社会的に損失の大きな疾患であり、当院ではBMIが15kg/m2未満の最重度の症例を多く受け入れています(2020年から2024年までの6年間に、精神科病棟で16例、小児科病棟で2例の受け入れ実績。 15日以上入院した症例のみ集計)。2025年3月より、当院は摂食障害入院医療管理加算算定病院となりました。病棟所属の管理栄養士、公認心理師、精神保健福祉士、作業療法士、看護師、医師の多職種チームで、行動制限療法を用いた診療を行っています。

7.周産期のメンタルヘルス(産後うつ病など)

富山県内の精神科クリニック、産婦人科クリニックからご紹介頂き、妊娠、産後の精神科診療を担っています。当院の精神科病棟と産科病棟は隣接し、産科、新生児科、小児科との連携が取りやすい体制となっています。また唯一の県立病院であることから、県内の保健所(厚生センター)の保健師とも密に連絡をとり、産前産後の支援を行っています。2020〜2024年の5年間で、13例の妊産婦さんが当院の精神科病棟で入院しています。2025年度より当院産科、県内産科の医療機関の協力で、研修会を開催し、より連携を深める方針です。

8.児童思春期診療

当院は富山児童相談所まで徒歩で行ける距離にあり、また当院の精神科医が月2回、児童相談所に出張していること、当院の小児科診療体制が充実していることから、当院の全精神科医が児童思春期症例の診療を行っています。12歳以下の症例の外来診療実績は、2020年度16例、2021年度21例、2022年度16例、2023年度19例で、主に小学生以上の症例を扱っています。当科には公認心理師が少ないため、心理検査や詳細な特性評価は困難ですが、予約なしでの初診対応も行なっており、迅速な診療及び介入が可能です。児童精神科の初診予約が数カ月先で待っていられない等、急を要する症例については、当科の受診をご検討下さい。
 特に、自殺企図、自殺未遂、重度の神経症性やせ症の入院対応も行えます。2016〜2023年度の間で、12歳以下の児童の精神科病棟での入院実績は9例あり、主に摂食障害、発達障害、知的障害の方が入院されています。10歳未満の入院も1例あります。当院精神科病棟は一般成人が対象ですが、10代が6.9%、20代が12.3% (2014〜2023年平均)と若年層の入院も一定数あり、児童症例の患者も馴染みやすい環境です。ちなみに、精神科病棟の入院患者の年齢構成 (2014〜2023年)は、10代が6.9%、20代が12.3%、30代が13.4%、40代が18.8%、50代が16.8%、60代が14.2%、70代が11.4%、80代以上は5.6%と、ほぼ富山県全体の年齢別人口構成比に近くなっております。
下記のリンクは富山市医師会報への当院及び富山県における児童精神科入院診療についての寄稿です。富山市医師会のご厚意で当ホームページに転載させて頂きました。
富山県における児童精神科入院診療の現状と課題

9.司法・地域行政・災害医療

当科では、司法、行政当局の要請に応じ、精神鑑定、医療観察法の通院処遇指定医療機関としての診療と、措置入院、緊急措置入院、応急入院の受け入れを行っています。措置入院については県内発生の34%(175例中59例)、緊急措置入院は53%(17例中9例)、応急入院については県内発生の96%(46例中44例)を当院で対応しています(いずれも2020〜2024年の集計)。
また、富山県内で唯一稼働出来るDPAT(災害精神医療チーム)先遣隊をもつ医療機関として、能登半島地震、熊本地震等の被災地で、当科の職員が活動しました。DPAT発足前には、東日本大震災、ニュージーランド地震、新潟中越地震にも活動実績があります。2025年1月現在、 医師4名 看護師5名 公認心理師1名のDPAT先遣隊員が在籍し、県内災害発生時に備え、県厚生部と協力し、県内精神科医療機関の災害訓練にファシリテーターとして参加しています。

最近のできごと

当院デイケアでは2025年2月より体制を変更し、従来のデイケア、午前のショートケアに加え、午後からのショートケアを開始しました。朝から活動するのが苦手な患者さんや、ラッシュアワーの交通機関や車の運転が苦手な患者さんがより利用しやすくなります。また、利用枠が広がることもあり、他院通院中の患者さんにも、デイケア利用を開放することにしました。当院精神科の入院患者の年齢構成が比較的若年者層が多いこともあり(平均年齢45歳)、当院デイケアは10代20代の利用者も多く、復学や就学、復職や就労への橋渡しとなっており、当院デイケアスタッフが社会復帰、社会参加のサポートを行っています。詳しくは当院デイケアスタッフにお問い合わせ下さい。
デイケアのパンフレット(2025年2月版)

【診療体制】

【スタッフ】

当科では2025年2月現在、精神科医師は、野原部長、米澤部長、瀬尾部長、大口医長、福井副医長、麻生医師、森田医師の7名です。内、4名が精神保健指定医です。初期研修医が2~3名程度、ローテート(1~2ヶ月)で研修しています。当科では、多職種のスタッフでチーム医療を行っています。(表1)。

表1 スタッフ配置

【外来】

外来では、統合失調症、気分障害、発達障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、摂食障害、器質性精神障害など、精神疾患全般にわたり診療しています。初診では一人当たりの診察時間が長く、時として患者さん方を長くお待たせしてご迷惑をおかけすることがあります。また、紹介状(診療情報提供書)をお持ちの方が優先となります。また紹介状をお持ちでない場合、費用(選定療養費)がかかります。可能でしたら、紹介状(診療情報提供書)をご持参下さい。なお、紹介状をお持ちで無い方も、その日のうちに診察するよう努めています。気軽にご相談下さい。

【入院】

精神科病棟は2011年9月より精神科救急入院料算定病棟となりました。精神科救急入院料算定病棟とは、精神科救急、急性期の患者さんが対象で、保険診療において精神科では密度の高い診療を行うものです。救急急性期の入院患者さんを比較的短期間に集中して、在宅で安定して生活できる水準に回復させる機能を持つために、ハードルの高い算定基準があります。
さらに、2017年11月より、精神科救急・合併症入院料算定病棟となりました。以前から合併症の方の対応も多く担っており、診療報酬上もその状況が反映されることとなりました。当科病棟における診療実績は以下の通りです(表2、表3、表4参照)。

精神科救急・合併症入院料算定の
主な要件
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度
(4~12月)
新規患者(延べ数)
40%以上
83.1 82.7 86.2 85.4 86.1
任意入院以外の新規患者60%以上 87.0 81.7 85.6 86.6 84.2
新規患者3ヵ月内
在宅退院40%以上
70.1 69.7 72 74.3 57.3
平均在院日数(日) 39.9 41.7 42 44.5 37.9
病床利用率(%) 67.3 64.9 72.9 72.6 66.8
年間の県内発生措置・
応急入院症例の受入れ25%以上
41.4 46.9 40.0 47.9 66.7
措置件数(当院/県) (13/45) (13/37) (15/44) (15/40) (12/24)
応急件数(当院/県) (11/13) (10/10) (5/6) (8/8) (8/9)

表2 2020~2024年度の診療実績

表3 2024年度の入院患者精神疾患分類集計

表4 2024年度の入院患者の入院期間集計

下記の精神科週間スケジュールに示すように、毎朝、スタッフミーティングを行い、新入院の症例の紹介、入院患者の初期、中間、退院前カンファレンス、措置入院者検討会、行動制限最小化検討会、退院前訪問指導報告、ベッドコントロールなどをスタッフ全員で行っております(表5)。 精神科疾患の急性期治療・早期治療を行っていく上で重要となるのが、患者さん自らの病気の理解です。これが得られることにより、患者さん自身による治療参加や症状のコントロールが可能となり、症状の改善や再発予防につながることで、急性期の治療が円滑に進むと考えられます。そのため、当科では、2008年4月から、これまで行っていた患者心理教育のさらなる整備・充実をはかり、現在は、入院患者さんに対して、統合失調症と双極性感情障害(躁うつ病)の方の患者心理教育を毎週火曜日と木曜日に行っております。これは、数名の患者さんと多職種のスタッフで一つのグループを形成し、患者さんに対する講義と、グループ内で討議を行い、お互いに病状の理解を深めるものです。患者さんの評判は概ね良好で、「また、このような話を聞きたい、他の人が症状にどのように対処しているのか聞けたことが良かった」などと話されました。
また、入院したばかりの患者さんの気持ちを受け止めるための入院初期教育を随時行い、集中力・活動性の向上のための作業療法も精神科リハビリテーションとして組み込まれています。その他に入院中のアメニティについて患者さん方とスタッフが話し合う患者交流会なども毎月開いています。

表5 精神科週間スケジュール

さらに、薬物療法では早期の回復が困難な患者さんに、修正型電気けいれん療法(mECT)を行う場合もあります。mECTは、麻酔科医の協力の下、手術室で行います。重症のうつ病、昏迷状態や興奮の激しい統合失調症の方に有効です。

術室での修正型電気けいれん療法

手術室での修正型電気けいれん療法

【臨床研修について】

当科では、研修医を積極的に受け入れております。研修医が受ける実習スケジュールについて、2023年7月のスケジュールを以下に示します。毎朝のスタッフミーティングでは、カンファレンスでプレゼンテーションを行います。研修医や学生に対して、短期間に精神科臨床とチーム医療の重要性を理解するため、多職種の講師がクルズスを行っています。現在は、精神科面接・診断、精神科薬物療法、患者・家族心理教育、精神科救急、精神科リエゾン・コンサルテーション、作業療法、臨床心理、精神保健福祉、デイケア、精神保健福祉法などのクルズスを受けることができます。希望があれば、認知症ケアチームの回診や当科医師が児童相談所で診察する際の同行・見学も出来ます。
臨床実習予定表(2023年7月のスケジュール)

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