循環器内科
概要
循環器疾患に対する高度専門医療の提供
当院では、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、不整脈、心不全、心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患、肺動脈疾患、大動脈疾患、末梢血管疾患など、あらゆる循環器疾患に対して、質の高い高度専門医療を提供する体制を整えています。
24時間対応の循環器救急医療
急性心筋梗塞、急性心不全、致死性不整脈、肺動脈血栓塞栓症など、命に関わる緊急症例にも迅速に対応できるよう、24時間体制で循環器救急医療を実施しています。
心臓血管造影装置の増設と検査・治療体制の強化
令和6年12月には、心臓血管造影装置を3台に増設・更新し、より多くの患者様に対して、迅速かつ的確な緊急心血管カテーテル治療や補助循環治療を実施できる体制を整備しました。
令和6年度の心血管カテーテル検査・治療件数は1,176件にのぼり、以下の治療に対応しています:
・虚血性心疾患へのカテーテル治療
・頻脈性不整脈へのカテーテルアブレーション
・末梢動脈疾患へのカテーテル治療
・大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)
・僧帽弁狭窄症に対するPTMC(経皮的僧帽弁形成術)
・閉塞性肥大型心筋症に対するPTSMA(カテーテル的心室中隔焼灼術)
・慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテル治療
補助循環・重症心不全への対応
心原性ショックを伴う重症心不全には以下のような補助循環治療を実施しています:
・大動脈内バルーンパンピング(IABP)
・補助循環用ポンプカテーテル(インペラ)
・経皮的心肺補助装置(ECMO・PCPS)
また、当院は植込み型左室補助人工心臓(LVAD)管理施設として、重症心不全患者の治療にも取り組んでいます。
デバイス治療の充実
不整脈・心不全治療として以下のデバイス植込みにも対応しています:
・ペースメーカー
・リードレスペースメーカー
・両室ペーシング(CRT)
・植込み型除細動器(ICD)
・両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRTD)
・皮下リード植え込み型除細動器(S-ICD)
・植込み型心電計
心臓リハビリテーションと社会復帰支援
急性心筋梗塞や心不全を患った患者様が、安心して社会復帰できるよう、入院・外来における心臓リハビリテーションを積極的に行っています。
専門医・指導医の育成
当院は、以下の学会に認定された専門医研修施設として、将来の循環器専門医・指導医の養成にも取り組んでいます:
・日本循環器学会
・日本不整脈心電学会
・日本心血管インターベンション治療学会
診療担当表
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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初診 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
再診13 | 北野 | ||||
再診16 | 近田 | 音羽 | 宮 | 宮 | 近田 |
再診17 | 丸山 | 臼田和 | 音羽 | 臼田和 | 丸山 |
医師紹介
医師名・職位 | 専門分野 | 資格 | |
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院長 臼田 和生 (うすだ かずお) |
循環器内科全般 不整脈 冠動脈疾患 心不全の薬物および各種非薬物療法 |
医学博士 金沢大学医薬保健学域医学類臨床教授 富山大学医学部臨床教授 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医・代議員・フェロー(FJCS) 日本心臓病学会フェロー(FJCS) 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 日本救急医学会救急科専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医・指導医 日本冠疾患学会・フェロー(FJCA) 日本心血管画像動態学会評議員 日本クリニカルパス学会理事 日本医療マネジメント学会評議員 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士 日本スポーツ協会公認スポーツドクター 日本医師会認定健康スポーツ医 日本医師会認定産業医 日本人間ドック学会認定医・人間ドック健診専門医・指導医 アメリカ心臓協会(AHA)会員 ヨーロッパ心臓病学会(ESC)フェロー(FESC) アジア太平洋心臓病学会(APSC)フェロー(FAPSC) 臨床心臓電気生理研究会特別幹事 |
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診療部長・部長 丸山 美知郎 (まるやま みちろう) |
循環器内科全般 心不全 ペースメーカー弁膜症 冠動脈疾患 |
医学博士 富山大学医学部臨床教授 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心不全学会・代議員 トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するビンダゲル導入認定医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士 日本スポーツ協会公認スポーツドクター 日本内科学会 JMECC ディレクター TAVR実施医(Sapien/CoreValveシリーズ) |
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部長 音羽 勘一 (おとわ かんいち) |
循環器内科全般 冠動脈疾患 弁膜症 末梢血管疾患 |
医学博士 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医・代議員 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士・評議員 日本救急医学会ICLSディレクター 日本内科学会JMECCディレクター 日本DMAT隊員/統括DMAT隊員 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓病学会特別正会員(FJCC)・代議員 TAVIR実施医( Sapien/CoreValveシリーズ) |
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部長 近田 明男 (ちかた あきお) |
循環器内科全般 不整脈 |
医学博士 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医・評議員 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士 日本心エコー図学会認定SHD心エコー図認証医 臨床心臓電気生理研究会幹事 |
副医長 北野 一樹 (きたの かずき) |
循環器内科全般 |
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医 TAVR実施医(Sapien) |
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副医長 宮 有佑 (みや ゆうすけ) |
循環器内科全般 |
日本専門医機構認定内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
医師 高柳 怜奈 (たかやなぎ れな) |
循環器内科全般 |
治療について
1.循環器救急医療
救命救急センターに救急車搬送される多数の循環器疾患救急患者さんに対して24時間体制で対応しています。一刻を争う急性心筋梗塞や不安定狭心症に対し24時間いつでも緊急カテーテル治療を行える体制を取っています。
急性心筋梗塞収容件数は、年間100件前後です。閉塞した冠動脈をバルーンカテーテル、薬剤塗布バルーン、薬剤溶出性ステント、血栓吸引カテーテルなどを用いて、迅速な血管再疎通による予後改善を目指しています。心機能の低下によりショック状態になった重症心不全に対しては、大動脈内バルーンポンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(ECMO・PCPS)、補助循環用ポンプカテーテル(Impella)などの補助循環を用いて、救命率と長期予後を改善する治療を行っています。心臓血管外科と緊密に連携し、緊急に冠動脈バイパス手術などが行えるように体制を整備しています。
2.虚血性心疾患
心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈が動脈硬化で狭くなったり、詰まったりする病気が狭心症や心筋梗塞と呼ばれる虚血性心疾患です。
虚血性心疾患は、症状(胸痛、息切れなど)、心電図、血液検査、心臓超音波検査、心臓核医学検査、造影CT検査などにより診断します。当院はC T装置4台を導入しており、いち早くCT検査による冠動脈の評価ができます。また、県内で2施設のみが対応している「FFRct」という先進的な検査方法を導入しています。この検査は、CT画像から血流の状態を解析できる技術で、入院を要せずに狭心症の正確な診断と治療方針の決定を可能にします(FFRctの詳細は、お知らせに掲載)。
循環器内科では、1983年9月より虚血性心疾患に対するカテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)を開始しました。冠動脈狭窄部をバルーンカテーテルを用いて拡張し、狭窄部分の形態に応じて経皮的冠動脈ステント留置術や薬剤溶出性バルーンによる治療を行います。冠動脈の石灰化等で拡張が難しい場合には、高速回転式経皮経管アテレクトミー(ロータブレータ)やアテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル(ダイアモンドバック)、血管内石灰化破砕術(IVL)などの先進的デバイスを活用して、難治性病変にも対応しています。
3.不整脈
カテーテルで頻脈性不整脈を根治するカテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)を積極的に行っており、多くの治療実績があります。治療の対象となる不整脈は、WPW症候群、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心房頻拍、心室頻拍などで、
最近では心室細動の一部も治療が可能となっています。
カテーテルアブレーションは年々増加しており、2024年度は430件を行いました。3Dマッピングシステム(CARTO、Ensite、RHYTHMIA)を用いることで心房性ならびに心室性の複雑な不整脈に対する治療が可能です。また小児科と連携して乳幼児から小児期の頻拍症に対してもカテーテル・アブレーションを行い、極めて高い効果を挙げています。したがって、県外からカテーテル・アブレーション治療を受けにこられる患者さんも数多くおられます。心房細動治療に関しては従来の高周波アブレーションやバルーンアブレーション(クライオバルーン、レーザーバルーン)に加え、2024年度からパルスフィールドアブレーションを北陸ではいち早く導入しています。
徐脈性不整脈に対しては、ペースメーカー手術行い、徐脈性心房細動には電極リードのないリードレスペースメーカーを使用しています。
生命に関わる重症な心室性不整脈(心室頻拍や心室細動)に対しては、植込み型除細動器(ICD)の植込み術を行っています。また、血管や心臓内に電極リードを留置しない皮下植込み型除細動器手術を行い、感染症のリスクを低減できるようにしています。デバイス感染症令に対しては、経皮的リード抜去術(メカニカルシース)にも取り組んでいます。
4.心不全
虚血性心疾患・心臓弁膜症・心筋症・高血圧などにより生じる心不全は、高齢化とともに年々増加しており2030年に患者数は130万人に達すると推定されています。心不全の患者さんには、心電図、心エコー、核医学検査、心臓MRI、心臓カテーテル検査などを行い、心不全の原因、重症度を評価して、治療方針を決めます。心原性ショックを伴う重症例には、補助循環装置(大動脈内バルーンパンピング、経皮的心肺補助装置、補助循環用ポンプカテーテル)を使用して救命率の向上に努めています。令和6年度は、大動脈内バルーンポンピング33件、補助循環用ポンプカテーテル・インペラ14件、経皮的心肺補助装置22件を実施しました。重症心不全・心移植待機のため植込み型左室補助人工心臓を装着された患者さんの管理を連携施設と協同して行える院内体制を整備しています。
慢性期は薬物療法、ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)などの非薬物療法を併用して症状や予後の改善を目指しています。回復期には、患者さんに心不全手帳を用いてセルフケアをしていただいて、心不全の悪化を予防するようにします。個々の患者さんに適した治療方法を選択し、Quality of Life(生活の質)の改善も心がけています。
5.血管疾患
動脈硬化は全身の血管病です。心臓以外にも、腎臓、下肢動脈などの血管の動脈硬化性病変により、難治性高血圧症や腎不全の原因となる腎動脈狭窄症、下肢の間欠性跛行(歩くと足が痛くなるような症状)や足壊疽の原因となる閉塞性動脈硬化症などを併発している患者さんは近年増加しています。循環器内科では、薬物療法、カテーテルによる経皮的血管形成術を行っています。重症度に応じて、血管外科・放射線科と連携した、ハイブリッド治療も行っています。
冠動脈疾患にとどまらず幅広い血管病変への対応を強化しています。
6.弁膜症
大動脈弁狭窄症は、日本における患者数は70—140万人と推定されます。原因は、加齢による大動脈弁の石灰化が多いとされます。これまで重症大動脈弁狭窄症の高齢患者さんは、症状が生じても外科的大動脈弁置換術の施行が困難でした。経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation;TAVI)は、重症大動脈弁狭窄症に対する新たな治療法です。手術で開胸せずカテーテルにより人工弁を留置するため体への負担が少なく、高齢患者さんが良い適応です。当科で大動脈弁狭窄症の検査をした後、心臓血管外科とともにTAVIを行います(TAVIの詳細はお知らせに掲載)。
また、僧帽弁狭窄症で狭くなった僧帽弁をバルーンで拡張する経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)や重度大動脈弁狭窄症に対する経皮的大動脈弁バルーン拡張術を行っています。
7.その他の心疾患に対する高度医療
閉塞性肥大型心筋症に対する経皮的中隔心筋焼灼術、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する経皮的肺動脈形成術を行っています。
トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬の日本循環器学会認定導入病院になっており、多くの患者さんをご紹介いただいています。
また、先天性心疾患の成人期移行診療にも対応しています。
8.心臓リハビリテーション
外来・入院患者さんの心臓リハビリテーションに対応しています。当部門の心臓リハビリテーション指導士が中心となって作成したリハビリテーションプログラムを用いて急性心筋梗塞、冠動脈形成術術後、心不全などの心臓病を持つ患者さんが快適で活動的な社会生活に復帰できるよう援助しています。また、薬剤師、栄養士、糖尿病療養指導士などの専門家が薬物、食事に関する相談にのり退院後の生活の援助を行います。
9.地域医療連携
当科では近くの診療所からの紹介はもとより県内外からの紹介を積極的に受け入れており、95%(令和6年度)が、他の診療所や病院からの紹介の患者さんです。現在、かかりつけ医をお持ちの患者さんは、当科を受診される際には、紹介状をお願いします。
外来では、心臓病の再発、悪化の予防を第一とし、客観的な医学データ (エビデンス)に基づいて高血圧の薬やコレステロールの薬、血が固まらないようにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)などを、適切に提供できるように診療を行っています。また、当科で専門的な治療を受け安定された患者さんは、かかりつけの先生やお近くの医院にご紹介し、日常の診療はかかりつけ医で受けていただき、定期的検査を当院で行うという「病・診」(病院と診療所)連携による心臓病のきめ細かな長期管理を推進しています。