循環器内科
概要
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、心不全、心筋症、心臓弁膜症、先天性心疾患、肺動脈疾患、大動脈疾患、末梢血管疾患など、あらゆる循環器疾患に対して最先端の高度専門医療を提供できるよう取り組んでいます。また、循環器救急医療を24時間体制で実施しており、急性心筋梗塞、急性心不全、致死性不整脈、肺動脈血栓塞栓症など緊急症例を受け入れています。
令和5年度の心血管カテーテル検査・治療総数は1,182件でした。このうち虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈形成術・冠動脈ステント留置術(PCI)は326件で、成功率99.3%でした。高度石灰化狭窄には高速回転式経皮経管アテレクトミー(ロータブレータ)やアテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル(ダイアモンドバック)を併用し高い成功率を達成しています。閉塞性動脈硬化症や腎動脈狭窄に対する経皮的血管形成術は78件でした。
頻脈性不整脈を根治するカテーテル・ アブレーションは405件で、3Dマッピングシステムならびにクライオバルーンやレーザーバルーンを取り入れて治療を行っています。ペースメーカーや植込み型除細動器などのデバイス植込み・交換件数は76件でした。リードレスペースメーカーや皮下リード植え込み型除細動器も導入しています。心不全治療では、急性期には補助循環(大動脈内バルーンポンピング、補助循環用ポンプカテーテル、経皮的心肺補助装置)、慢性期には薬物療法、ペーシングによる心臓再同期療法を行い、予後の改善に取り組んでいます。重症心不全症例の植込み型左室補助人工心臓の管理も行っています。また、重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術を心臓血管外科とともに行っています。
以上の専門的治療に加え、急性心筋梗塞、PCI 術後、心不全などの心疾患患者が快適で活動的な社会生活に復帰できるよう、外来・入院での心臓リハビリテーションを行っています。さらに日本循環器学会専門医研修施設として、循環器全般にわたり、診療能力を発揮し得る専門医と指導医の養成をしています。
診療担当表
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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初診 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
再診13 | 藤木 | ||||
再診16 | 近田 | 音羽 | 松浦 | 松浦 | 近田 |
再診17 | 丸山 | 臼田和 | 音羽 | 臼田和 | 丸山 |
医師紹介
医師名・職位 | 専門分野 | 資格 | |
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院長 臼田 和生 (うすだ かずお) |
循環器内科全般 不整脈 冠動脈疾患 心不全 |
医学博士 金沢大学医薬保健学域医学類臨床教授 富山大学医学部臨床教授 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医・代議員・フェロー(FJCS) 日本心臓病学会特別正会員(FJCC) 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 日本救急医学会救急科専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医 日本心不全学会評議員 日本冠疾患学会評議員・フェロー(FJCA) 日本心血管画像動態学会評議員 日本集中治療医学会東海北陸支部連絡協議会委員 日本クリニカルパス学会理事 日本医療マネジメント学会評議員 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士・評議員 日本体育協会公認スポーツドクター 日本医師会認定健康スポーツ医 日本医師会認定産業医 日本人間ドック学会認定医・人間ドック健診専門医・指導医 アメリカ心臓協会(AHA)会員(Golden Member) ヨーロッパ心臓病学会(ESC)フェロー(FESC) アジア太平洋心臓病学会(APSC)フェロー(FAPSC) |
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診療部長・部長 丸山 美知郎 (まるやま みちろう) |
循環器内科全般 冠動脈疾患 心不全 |
医学博士 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士 日本体育協会公認スポーツドクター 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本内科学会 JMECC ディレクター トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するビンダゲル導入認定医 |
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部長 音羽 勘一 (おとわ かんいち) |
循環器内科全般 冠動脈疾患 心不全 末梢動脈疾患 心臓リハビリテーション |
医学博士 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士・評議員・ICLSワークショップディレクター 日本内科学会認定内科救急・ICLS(JMECC)コースディレクター 日本DMAT隊員 地域包括医療・ケア認定医 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 |
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部長 近田 明男 (ちかた あきお) |
循環器内科全般 不整脈 |
医学博士 日本内科学会認定内科医・指導医・総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本不整脈心電学会「ICD/CRT」認定医 日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士 日本心エコー図学会認定SHD心エコー図認証医 |
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医長 松浦 伸太郎 (まつうら しんたろう) |
循環器内科全般 |
日本内科学会認定内科医・指導医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 |
副医長 北野 一樹 (きたの かずき) |
循環器内科全般 |
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医 |
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医員 藤木 洋佑 (ふじき ようすけ) |
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医師 宗平 悠暉 (むねひら ゆうき) |
治療について
1.循環器救急医療
救命救急センターに救急車搬送される多数の循環器疾患救急患者さんに対して24時間体制で対応しています。一刻を争う急性心筋梗塞や不安定狭心症に対し24時間いつでも緊急カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)を行える体制を取っています。
急性心筋梗塞収容件数は、年間100件前後です。閉塞した冠動脈をバルーンカテーテル(細長い風船)で拡張し、薬剤溶出性バルーンや薬剤溶出性ステント(金属製の網目状の円筒)を使用するのみならず、血栓吸引療法を併用し、心機能が維持されるよう積極的な治療を行っています。また、急激な心機能の低下や疾患合併症により重症心不全を併発した患者さんに対しては、大動脈内バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置(ECMO)、補助循環用ポンプカテーテル(Impella)などの補助循環を用い、救命率の向上と長期予後の改善を目指した治療を行っています。また、平時より心臓血管外科と緊密に連携し、必要に応じて、冠動脈バイパス手術などが行えるように体制を構築しています。各種心疾患に起因する重症心不全に対し、最新の知見を基にした薬物療法と非薬物療法を組み合わせ、早期離床を目指した治療を行っています。また、不整脈に対する緊急治療にも幅広く対応しており、徐脈に対する体外式ペースメーカーはもとより、頻拍発作に対して緊急でカテーテルによる根治術を行うことも可能な体制をとっています。
2.虚血性心疾患
心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈の内腔が動脈硬化で狭くなることによって起こる狭心症や心筋梗塞を総称して虚血性心疾患と呼びます。循環器内科では、1983年9月より虚血性心疾患に対するカテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)を開始しました。現在、心臓カテーテル総数は年間約1,400件、このうち経皮的冠動脈形成術は年間約330件、成功率は99.3%です。冠動脈の狭窄部をバルーン(風船)カテーテルを用いて拡張し、狭窄部分の形態に応じて経皮的冠動脈ステント留置術や薬剤溶出性バルーンによる治療を行います。冠動脈の石灰化等で通常のバルーンでの拡張が難しい場合には、高速回転式経皮経管アテレクトミー(ロータブレータ)やアテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル(ダイアモンドバック)、shockwaveによるintravascular lithotripsy (IVL)など用い、冠動脈を拡張しやすい状態にしてから治療を行っています。
3.不整脈
カテーテルで頻脈性不整脈を根治するカテーテル・アブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術)を積極的に行っており、全国でも有数の実績があります。治療の対象となる不整脈は、WPW症候群、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心房頻拍および心室頻拍です。
頻脈性不整脈を根治するカテーテル・アブレーションは年々増加しており、令和5年度は405件を行いました。3Dマッピングシステム(CARTO、Ensite、RHYTHMIA)ならびにバルーンアブレーション(クライオバルーン、レーザーバルーン)を用いて、心房性ならびに心室性の様々な不整脈に対する治療が可能です。また小児科と連携して乳幼児から小児期の頻拍症に対しても当科でカテーテル・アブレーションを行い、極めて高い効果を挙げています。したがって、県外からカテーテル・アブレーション治療を受けにこられる患者さんも数多くおられます。
徐脈性不整脈に対しては、ペースメーカー植込み術を年間100件前後行っています。徐脈性心房細動には、電極リードのないリードレスペースメーカーを使用しています。
生命に関わる重症な心室性不整脈(心室頻拍や心室細動)に対しては、植込み型除細動器(ICD)の植込み術を行っています。また、血管や心臓内に電極リードを留置しない皮下植込み型除細動器手術を行い、感染症のリスクを低減できるようにしています。
4.心不全
虚血性心疾患・心臓弁膜症・心筋症・高血圧などにより生じる心不全は、高齢化とともに年々増加しており2030年に患者数は130万人に達すると推定されています。心不全の患者さんには、心電図、心エコー、核医学検査、心臓MRI、心臓カテーテル検査などを行い、心不全の原因、重症度を評価して、治療方針を決めます。心不全の治療には、急性期は薬物療法、補助循環(大動脈内バルーンパンピング、経皮的心肺補助装置、補助循環用ポンプカテーテル)を行って救命率の向上をはかり、慢性期は適切な薬物療法、ペーシングによる心臓再同期療法、陽圧換気療法などの非薬物療法を行って予後の改善を目指します。回復期には、患者さんに心不全手帳を用いてセルフケアをしていただいて、心不全の悪化を予防するようにします。個々の患者さんに適した治療方法を選択し、Quality of Life(生活の質)と予後の改善を目指しています。
5.血管疾患
動脈硬化は全身の血管病です。心臓以外にも、腎臓、下肢動脈などの血管の動脈硬化性病変により、難治性高血圧症や腎不全の原因となる腎動脈狭窄症、下肢の間欠性跛行(歩くと足が痛くなるような症状)や足壊疽の原因となる閉塞性動脈硬化症などを併発している患者さんも多くみられます。循環器内科では、薬物療法、カテーテルによる経皮的血管形成術を行っています。重症度に応じて、血管外科・放射線科と連携した、ハイブリッド治療も行っています。
6.弁膜症
大動脈弁狭窄症は、日本における患者数は70—140万人と推定されます。原因は、加齢による大動脈弁の石灰化が多いとされます。これまで重症大動脈弁狭窄症の高齢患者さんは、症状が生じても外科的大動脈弁置換術の施行が困難でした。経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation;TAVI)は、重症大動脈弁狭窄症に対する新たな治療法です。手術で開胸せずカテーテルにより人工弁を留置するため体への負担が少なく、高齢患者さんが良い適応です。当科で大動脈弁狭窄症の検査をした後、心臓血管外科とともにTAVIを行います。
また、僧帽弁狭窄症で狭くなった僧帽弁をバルーンで拡張する経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)や重度大動脈弁狭窄症に対する経皮的大動脈弁バルーン拡張術を行っています。
7.その他の心疾患に対する高度医療
慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する経皮的肺動脈形成術、肺塞栓および深部静脈血栓症に対する下大静脈フィルター留置術など、全身の心血管病に対する治療を行う高度な技術と最新の医療設備を備えています。
閉塞型肥大型心筋症に対しては、薬物療法のほか、経皮的中隔心筋焼灼術を行っています。拡張型心筋症に対しても先進的医療技術を取り入れて診療し、重症心不全のため植込み型補助人工心臓を装着された患者さんの管理を心臓移植実施施設と連携をして行う体制を整えています。
厚生労働省が定める難病(特定疾患)に対する診療および治療を行っています。高安動脈炎、特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、原発性肺高血圧症、特発性慢性肺血栓塞栓症、アミロイドーシスなどは特定疾患に指定されています。多臓器にわたる管理が必要となるため、各臓器の専門医と協力して診療にあたります。
また、トランスサイレチン型心アミロイドーシスの治療薬(タファミジス)の導入病院に認定されています。
8.心臓リハビリテーション
外来・入院患者さんの心臓リハビリテーションに対応しています。当部門の心臓リハビリテーション指導士が中心となって作成したリハビリテーションプログラムを用いて急性心筋梗塞、冠動脈形成術術後、心不全などの心臓病を持つ患者さんが快適で活動的な社会生活に復帰できるよう援助しています。また、薬剤師、栄養士、糖尿病療養指導士などの専門家が薬物、食事に関する相談にのり退院後の生活の援助を行います。
9.地域医療連携
当科では近くの診療所からの紹介はもとより県内外からの紹介を積極的に受け入れており、上記のような専門治療を受けられる96%(令和5年度)が、他の診療所や病院からの紹介の患者さんです。現在、かかりつけ医をお持ちの患者さんは、当科を受診される際には、紹介状をお持ち下さい。
外来では、心臓病の再発、悪化の予防を第一とし、客観的根拠(エビデンス)に基づいて高血圧の薬やコレステロールの薬、血が固まらないようにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)などを、適切に提供できるように診療を行っています。また、当科で専門的な治療を受け安定化された患者さんは、かかりつけの先生やお近くの医院にご紹介し、日常の診療はかかりつけ医で受けていただき、定期的検査を当院で行うという「病・診」(病院と診療所)連携による心臓病のきめ細かな長期管理を推進しています。