在宅療養支援室
生活習慣病指導教室とは?
食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその病気の発症・進行に関与する病気を生活習慣病といい、糖尿病、脂質異常症、肥満、痛風、脳血管疾患、虚血性心疾患、悪性腫瘍などです。生活習慣病指導室ではこのような患者さんが健康的な生活習慣をご自分で確立できるようにサポートさせていただきます。
ご利用概要
●診察の前後に、医師の指示項目に沿って行います。
場所 | 外来診療棟1階 ※内科(内分泌・代謝)外来診察室に隣接して生活習慣病指導室があります。 |
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担当 | 日本糖尿病療養指導士の資格を取得した看護師が、毎日交替して指導にあたっています。 |
対象 | 糖尿病、脂質異常症、肥満症など生活習慣に関するアドバイスが必要な患者さんとそのご家族です。 |
指導の方法
1.指導項目
- 1)疾患(糖尿病、耐糖能障害、脂質異常症、肥満症)の概要
- 2)病態や合併症に関する検査の重要性と結果の見方
- 3)食事療法の重要性や食品交換表の使用方法の理解
- 4)嗜好食品(アルコール、お菓子)、外食の影響
- 5)運動療法の効果と実践方法の理解
- 6)経口血糖降下薬(内服)の効能、効果、注意事項
- 7)血糖自己測定法の手技、注意点と血糖値の解釈
- 8)インスリンやGLP-1受容体作動薬自己注射の手技と注意点、管理方法
- 9)CGM(持続血糖測定)システム、GSII(持続皮下インスリン注入療法)の管理方法
- 10)低血糖の知識と対処方法、予防方法の理解
- 11)シックデイの知識と対処方法の理解
- 12)手術時、旅行時、災害時の際の注意点の説明
- 13)インスリン自己注射中の患者の家族に対するグルカゴン注射指導
- 14)身体の清潔とフットケアの方法
- 15)生活行動記録に基づく生活改善点のアドバイスを行う
- 16)体重管理方法
- 17)このほか、妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠、重症肥満症、1型糖尿病、ヤング糖尿病へのサポート等
2.指導方針
生涯にわたって地域の医療機関との連携を図り、患者さんの健康維持に努め、合併症の発症や進展を防止します。特に糖尿病においては治療システム「オールインワンシステム」(図1)を立ち上げ、療養指導の節目にあわせた患者さんへの指導を行います。
オールインワンシステムとは
自覚症状の出現や健康診断の二次検診で来院された患者さんが、糖尿病と診断され教育入院や外来通院で自己管理できるようになり、かかりつけ医(地域の診療所)にもどられ、年1回定期的に紹介され受信される。このサイクルを生涯繰り返していただき、病診連携のもとで健康を維持していただくためのしくみです。
オールインワンシステムでの糖尿病療養指導士の関わり (図1)
この中で1~6までの介入ポイントを設定し、療養指導を行っています。
1) 初診時 | 基本的事項の指導を行い、治療への意欲が高まるよう積極的に関わります。 |
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2) 教育入院前 | 入院のスケジュール表を事前に渡し、血糖自己測定や食事の単位計算など習得内容を説明し、入院治療が効率よく進行出来るようにしています。 |
3) 入院中 | 毎週の総回診やカンファレンスに参加し、外来通院時の様子を伝え、また、入院中の状況を把握し療養指導に生かせるよう関わっています。 |
4) 退院後初回 | 退院後の在宅での自己管理状況を確認し、実生活に応じた指導を行います。 |
5) 転院前 | 自己管理の基本事項を再確認し、病診連携とフォローアップについて説明しています。 |
6) フォローアップ時 | フォローアップ入院や短期外来チェックコースのスケジュールに基づき、 指導しています。そして再び病診連携につなげています。 以後5)と6)の繰り返しにより、長期にわたる生活の質(QOL)の維持を目指しています。 |
教育入院とは
1) 教育入院(10日間コース)
糖尿病初発の方、教育入院経験のない方、良好な血糖コントロールの維持が難しい方、その他かかりつけ医からのご紹介の方を対象に合併症の精密検査、治療ともに自己管理法を基本から学んでいただくコースです。
2) シニア入院
高齢者で疾患などにより自己管理の必要性を理解できない、実践が困難である方が、家族の協力により血糖コントロールが安定すると思われる患者さんを対象に、合併症精査、薬物療法の再調整、糖尿病治療とともに家族を中心に在宅療法指導を行うコースです。
3) 妊娠糖尿病入院
妊娠中に発見された耐糖能異常の方が、母子とも健康で安心な妊娠、出産を迎えるために合併症の精査、インスリン導入や調整および妊娠週数に応じた食事療法や日常生活の自己管理方法を学んでいただくコースです。入院中は助産師と連携しながら健やかな出産に向けての専門的な知識も身に付けることができます。
4) 糖尿病腎症入院
糖尿病の3大合併症である糖尿病腎症の発症の予防や進行を阻止するために食事療法を中心に学んでいただくコースです。腎症の病期に合わせた蛋白制限やカリウム制限および血圧管理、浮腫に対する注意事項、日常生活の自己管理方法を身に付けることができます。
フォローアップ対応のフォローアップ入院と短期外来チェックコースとは
1) 3泊4日と週末4泊5日のフォローアップ入院
教育入院1年後、かかりつけ医から紹介された患者さんおよび当院通院患者さんが、自己管理方法を見直す、薬物療法の調整、糖尿病合併症の精密検査の機会にしていただいています。生活習慣病指導室では、退院後初回受診時には、フォローアップ退院後の実施状況を確認し、生活上の問題点に対し療養指導を行っています。
2) 短期外来チェックコース
かかりつけ医からの紹介患者さんで治療、教育が必要で入院および当院への継続通院が困難な方やフォローアップ入院が難しい患者さんが、2週間毎に計4回外来受診し、合併症の精査や治療・疾患管理の必要性や知識を学習するコースです。コース終了後、習得状況をかかりつけ医の先生に報告し、定期受診を継続していただいています。
具体的な指導の流れ
1.初めて糖尿病と診断された方には
糖尿病の基本的な知識を身につけていただき、日常生活において自己管理できるよう指導しています。教育入院は、初めて糖尿病と診断された方ほど効果があります。
2.治療放置・中断の方には
糖尿病を生活習慣との関連を認識できず治療方針を受け入れていただけない患者さんに対しては、ご本人のお考えを聴きながら繰り返し指導を行い、再び中断されないよう、少しでもお役にたてるよう努力し続けています。ご家族のご理解とご協力が必要となることもあります。
入院に際しては外来で、あらかじめ教育入院の予定を説明し、入院直後から学習効率が上がるように教育入院の主旨を理解していだだいています。
3.通院中でコントロール不良の方には
患者さんから話を聴き、患者さん自身が自覚され行動修正できるようサポートします。また具体的な行動記録や食事記録を持参、自己評価していただき、改善点を見出した上でできることから徐々に修正していただくようにします。再度栄養士による指導、糖尿病教室受講、教育入院などを紹介することもあります。
●運動療法では
効果や注意事項を説明した上で気軽に行える運動を紹介指導しています。
●薬物療法では
適切に行われているか確認しています。民間療法がコントロールを悪化させていることもあります。薬剤師による指導を手配することもあります。
4.不規則な生活パターンの方には
仕事を理由に何もなさらず、楽観的に考えあまり真剣に取り組まれない方に対しては生活行動を一緒に検討し、何か一つでも効果が得られ、行動修正のきっかけとなればと願っています。
5.糖尿病腎症の方には
医師と看護師、管理栄養士が連携して、「早期腎症」の段階から透析予防のためのチーム医療に取り組んでいます。医師の診察のあと管理栄養士が外来に出向き、食事についてのアドバイスを行い、引き続き生活習慣病指導室では日常生活上の管理方法や感染予防、血圧管理また糖尿病腎症教室の紹介等を実施しています。
6.妊娠糖尿病の方には
助産師との連携を図り、妊娠中の身体的・精神的サポートを行いながら、母子ともに健康を維持し、安心な出産を迎えられるよう努めています。
7.ヤング糖尿病、1型糖尿病の方には
学校、職場、家庭において自己管理の支障となる事柄について精神的なサポートやインスリン管理(低血糖やシックデイなど)、インスリン治療、持続インスリンポンプ注入治療(CSII)に伴う自己管理への強化を図っています。
その他の取り組み
1.フットケア看護専門外来との連携
医師の指示に基づき看護専門外来に予約し、30分から1時間フットケア専任の糖尿病療養指導士が、足の手入れや観察方法、日常生活の留意点などについて指導を行っています。
2.自己管理が困難な方(一人暮らし・ご高齢)の当院訪問看護ステーションとの連携
当院の地域連携室において訪問看護ステーションの紹介を行い、必要な方には手続きいたします。
3.病診連携への取り組み
富山県の基幹病院として地域の診療所(開業医)と連携して治療を継続できるようにしています。医師による合併症の検査が終了し、治療による血糖コントロールがよくなり、さらに自己管理の継続が十分可能と判断されれば、かかりつけ医に逆紹介されます。
1) 糖尿病医療連携カード発行(番号登録し管理)
医師の記載による合併症の有無、次回受診予定月や自己管理のワンポイントアドバイスを記載した糖尿病医療連携カードを発行し、各患者さんの糖尿病健康手帳に綴って保管し、自己管理の参考としていただいています。
2) 地域医療に従事する医療従事者との連携
当院で月1回、地域の医療従事者の方を交えて、「糖尿病療養指導のための養成講座」の学習会の開催し、情報提供や情報交換を行っています。
4.学習ルームの利用
待ち時間を有効に利用していただけるよう学習ルームを活用していただいています。診察室前の学習ルームは、DVDなどの視聴、最新の情報掲示、院内独自のテキストやパンフレット等を見ていただく自己学習コーナー、また、患者同士の意見交換の場となっています。
5.富山県立中央病院 糖尿病患者会「四ツ葉会」の紹介
当院糖尿病外来通院中の患者さんとその御家族、医療関係者のみならず糖尿病に関心のある方々が集い、お互いの経験や日常生活の管理方法を話し合う、また、講演会で糖尿病の知識を深めるなど、糖尿病を持つ人生を有意義に過ごせるよう活動しています。年に1度の総会をはじめ、講演会や料理講習会、ボウリング大会、ウォークラリーなどの行事を通して、会員の親睦を図っています。