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■診療概要
→治療について →Q&A →一般向けのお話
はじめに
 手術室では年間3300例程の患者さんの麻酔管理を行っています。「安全こそ麻酔」を基本理念に、患者さんを取り巻くさまざまなリスクを評価し、麻酔の管理方法を決めています。また、ペインクリニック外来では、痛みを持つ患者さんと向き合って、痛みの辛さを和らげるために神経ブロックなども用いた治療を行っています。チーム医療を得意分野としますので、名医100選に載ることはありませんが忘れないでください。
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■治療について
1.帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛2.癌性疼痛3.麻酔前投薬について
1.帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛
 帯状疱疹は、幼児期に罹患した水痘・帯状疱疹ウイルスが神経細胞に潜伏し、加齢や免疫能の低下により再活性化し、神経が障害される病気です。これにより知覚障害と運動麻痺をきたします。また、皮膚に発赤、腫脹、皮疹(水疱)が生じます。
 通常は、初期治療(多くは皮膚科で治療されます)により2〜4週間で水疱はかさぶたとなり、軽度の色素沈着を残して治ります。しかしながら、皮疹が消失した後も痛みを残し、患者さんを苦しめる状態を帯状疱疹後神経痛と呼んでいます。
 麻酔科(ペインクリニック科)では帯状疱疹後神経痛の患者さんに対して、神経ブロック療法を中心に治療を行っています。神経ブロック療法とは、神経に局所麻酔薬を注射し、一時的に神経を麻痺させる方法です。頭頚部、上肢の帯状疱疹後神経痛に対しては、外来通院(入院も可)で喉仏の横のあたりに局所麻酔薬を注射する星状神経節ブロックを行います。胸部以下の帯状疱疹後神経痛に対しては、入院の上、背中から細いチューブ(カテーテル)を硬膜外腔(脊髄のすぐそば)に挿入し、局所麻酔薬を持続的に注入する持続硬膜外ブロックを行います。何らかの理由で神経ブロックを行えない場合は、レーザー照射やキセノン光による温熱療法で代用することもあります。また、抗うつ薬や種々の鎮痛薬の内服も併用しています。
 帯状疱疹の発症早期から神経ブロック療法を開始した方が、疼痛、腫脹、発赤、皮疹の治癒を促進し、帯状疱疹後神経痛発生を予防する可能性があると考えられますので、帯状疱疹に罹患したら、なるべく早く麻酔科(ペインクリニック科)を受診されることをお勧めします。一方、治療開始が帯状疱疹発症後3ヶ月を超えた場合は、完治はなかなか困難です。現在のところ治療目標として、「夜間は眠れる」、「日中は、何かに集中していれば痛みを忘れる」、治療開始前の痛みが10段階の10として、これが3程度になれば、一応治療は成功したと考えていただいています。
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2.癌性疼痛
 1986年にWHO(世界保健機関)が先進諸国の鎮痛方法のノウハウを集約して作成したWHO式癌疼痛治療法を発表して以来、癌性疼痛で苦しむ患者さんは年々少なくなってきています。この方法は、鎮痛薬として、非麻薬性鎮痛薬、弱麻薬性鎮痛薬、強麻薬性鎮痛薬を痛みの程度に合わせて段階的に調節して使用する方法です。また、鎮痛薬以外にも鎮痛補助薬として抗うつ薬、抗けいれん薬、向精神薬、ステロイド等も併用します。さらには神経ブロック療法、放射線治療、理学療法、心理療法などを組み合わせて疼痛治療を行います。
 麻酔科(ペインクリニック科)では、神経ブロック療法により癌性疼痛の治療を行っています。癌性疼痛は、広範囲で、さまざまな要因がからみ合い複雑な痛みの形を呈することが多いため、神経ブロックのみで完全に除痛することは困難ですが、併用することにより鎮痛薬の量を減らすことは可能です。神経ブロック療法としては、内臓神経ブロック(腹腔神経叢ブロック)、くも膜下ブロック、硬膜外ブロック、などがあります.癌性疼痛に対する神経ブロックでは、局所麻酔薬ではなく神経破壊薬を用いることが多く、ブロックによっては、痛みをとると同時に運動神経麻痺も生じることがあります。したがって、痛みの部位や性状など患者さんとよく相談してブロックの適応を決定しています。
 癌性疼痛についてもっと詳しく知りたい場合は、当院緩和ケア部のホームページを御覧ください。
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3.麻酔前投薬について
 入院後、手術前夜や手術当日は皆さん緊張や不安があるものと思います。この心身の緊張や不安をやわらげるために、手術室へ行く前に鎮静薬を用います。これを麻酔前投薬といいます。一般に、小児の場合は鎮静薬をシロップに混ぜて処方しますが、成人患者さんでは前投薬は筋肉注射で行っています。しかしながら、筋肉注射の痛みや注射部位が硬結となり痛みを残す場合があるため、当院では成人患者さんにも麻酔前投薬をシロップによる内服としています。少し苦味がありますが、注射のような痛みもなく、鎮静効果も注射とほぼ同程度です。
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■Q&A
Q1.全身麻酔は安全ですか?Q2.手術後(麻酔からさめた後)は痛いのですか?Q3.どんな病気の時に麻酔科(ペインクリニック)外来を受診すれば良いのですか?Q4.子供が予防接種を受けました。全身麻酔を受けるまでにどれくらい期間をあければ良いですか?Q5.最近、まぶたがピクピク痙攣したり、まばたきが増えたりしています。大丈夫でしょうか?
Q1.全身麻酔は安全ですか?
A.単に手術中の痛みをとることだけを目的とせず、手術を受ける患者さんの全身管理を行うという発想の転換から、ここ20年の間に麻酔は飛躍的に進歩し、安全に行われるようになってきました。また、麻酔器や、モニターも非常に進歩しています。1998年の麻酔学会の統計では、麻酔が原因の偶発症例の最終的な死亡率は、90909症例に1例でした。当院では、麻酔専門医による術前診察、手術当日の麻酔科カンファレンス、術後回診等により、患者さんの周術期(術前から術後まで)管理を行い、より安全な麻酔を目指して日々努力しています。
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Q2.手術後(麻酔からさめた後)は痛いのですか?
A.多少の痛みはあるものと考えて下さい。術後の鎮痛にはさまざまな方法があります。当院では、局所麻酔や硬膜外麻酔などの神経ブロックによる方法や、非ステロイド性消炎鎮痛薬の坐剤や注射薬の使用で対応しています。この他には、麻薬などを少量持続的に注射する方法などもあります。これらの鎮痛方法を組み合わせた結果、現在のところ、安静時には痛くないけれども、体を動かしたり、咳をすると少し傷にひびく程度の鎮痛は得られています。
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Q3.どんな病気の時に麻酔科(ペインクリニック)外来を受診すれば良いのですか?
A.痛みで悩んでおられる方や、自律神経のアンバランスが原因の病気・症状(例えば鼻アレルギーなど)をお持ちの方は一度御相談ください。
ペインクリニックが治療対象とする病気や症状を部位別に示します。

部位 病気や症状
全身 癌性疼痛、帯状疱疹(後神経痛)、反射性交感神経性萎縮症、外傷や術後の長引く痛み、自律神経失調症、バージャー病、など
頭部・顔面 片頭痛、三叉神経痛、顔面痙攣、顔面神経麻痺、突発性難聴、花粉症、顎関節症、など
頚・肩・腕部 頚肩腕症候群、頚椎症、外傷性頚部症候群、肩こり、五十肩、など
胸背部 肋間神経痛、開胸術後疼痛、など
腰部・下肢 腰痛症、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、閉塞性動脈硬化症、など
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Q4.子供が予防接種を受けました。全身麻酔を受けるまでにどれくらい期間をあければ良いですか?
A.予防接種をした場合、そのワクチンと麻酔薬の相互作用は殆ど認められないものの、ワクチン接種後2〜4週間は免疫抑制状態からの改善が不十分なため、細菌の重複感染を予防する意味でも手術は控えた方が良いでしょう。手術を控える目安として、生菌ワクチン(BCG、ポリオ、麻疹、種痘、風疹、など)は、4週間、死菌ワクチン(日本脳炎、三種混合、インフルエンザ、など)は、2週間です。
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Q5.最近、まぶたがピクピク痙攣したり、まばたきが増えたりしています。大丈夫でしょうか?
A.眼瞼痙攣もしくは片側性顔面痙攣かもしれません。麻酔科では、これらの疾患に対し「ボツリヌストキシン療法」を積極的に行っています。ボツリヌストキシン療法は、従来までの飲み薬による治療、手術療法に代わる安全で有効な療法として最近脚光を浴びています。この方法は、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作りだすボツリヌス毒素を、痙攣を起こしている筋肉にごく少量注射し、中毒症状など全身への悪影響を及ぼすことなく痙攣や収縮の原因となっている神経の働きを抑えます。
 ボツリヌストキシン療法の効果は、通常1週間前後で現れ、3〜4ヶ月間続きます。末梢神経の再生により痙攣は徐々に再発します。ですから、ボツリヌストキシン療法は一度注射をしたらすべて治ってしまうものではなく、3〜4ヶ月ごとに注射を繰り返し行っていく必要があります。
 ボツリヌストキシン療法は、眼瞼痙攣、片側性顔面痙攣以外には、痙性斜頚に適応があります。詳しくは、当院麻酔科、神谷医長の外来(火曜日)へお問い合わせください。また、眼瞼痙攣もしくは片側性顔面痙攣かもしれません。麻酔科では、これらの疾患に対し「ボツリヌストキシン療法」を積極的に行っています。ボツリヌストキシン療法は、従来までの飲み薬による治療、手術療法に代わる安全で有効な療法として最近脚光を浴びています。この方法は、ボツリヌス菌(食中毒の原因菌)が作りだすボツリヌス毒素を、痙攣を起こしている筋肉にごく少量注射し、中毒症状など全身への悪影響を及ぼすことなく痙攣や収縮の原因となっている神経の働きを抑えます。
 ボツリヌストキシン療法の効果は、通常1週間前後で現れ、3〜4ヶ月間続きます。末梢神経の再生により痙攣は徐々に再発します。ですから、ボツリヌストキシン療法は一度注射をしたらすべて治ってしまうものではなく、3〜4ヶ月ごとに注射を繰り返し行っていく必要があります。
 ボツリヌストキシン療法は、眼瞼痙攣、片側性顔面痙攣以外には、痙性斜頚に適応があります。詳しくは、当院麻酔科、神谷医長の外来(火曜日)へお問い合わせください。また、www.btx-a.netでも紹介しています。
 なお、当科ではボツリヌストキシンによるプチ整形は行っていません。
最近、まぶたがピクピク痙攣したり、まばたきが増えたりしています。大丈夫でしょうか?でも紹介しています。
 なお、当科ではボツリヌストキシンによるプチ整形は行っていません。
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■一般向けのお話
1.喫煙と麻酔について
 喫煙による発癌性や呼吸・循環系に対する障害が注目されるようになり、近年禁煙運動が盛んに行われています。麻酔科では、一般には手術前数日間は禁煙していただいていますが、愛煙家にとって禁煙は苦痛であり、禁煙自体がストレスとなるかもしれません。今回は、喫煙が身体にどのような影響を及ぼし、禁煙期間はどれくらい必要なのかについて少しお話します。

1.心血管系に対して
 喫煙により吸入する煙の中には1〜5%の一酸化炭素(CO)が含まれています。血中COが増加すると、心臓の収縮力が弱くなったり、運動負荷時に心筋への血流が増加せず、狭心症発作を引き起したりします。COは赤血球のヘモグロビンとの結合力が酸素の200倍も強く、血中COが増加すると相対的に酸素が足りなくなり、脳や心臓など身体の重要臓器が低酸素状態となります。そのため、代償的に赤血球数が多くなり血液の粘度が上がります。血液が粘稠になると心臓にも負担がかかり、身体の隅々への血流にも悪影響を与えます。また、喫煙により血小板の寿命が短くなり凝縮が生じ、動脈血栓症の発生率も高くなります。さらには、煙草にはニコチンが含まれていますが、ニコチンは交感神経を興奮させ、心拍数の上昇、血圧の上昇などにより心臓に負担をかけます。このCOの増加や血液の粘度の上昇、ニコチンの血中濃度の上昇は2〜3日の禁煙で低下するので、術前の禁煙は心血管系に関して有効と考えられます。

2.呼吸器系に対して
 気管支表面には繊毛細胞があり、この繊毛運動により肺に入ってきた異物は喀痰として外に出されます。喫煙により繊毛運動は抑制され、肺内に溜った喀痰を出せなくなります。これにより末梢気道は閉塞し、体への酸素の取り込みが低下し、手術中に低酸素による障害が出る危険性もあります。この繊毛運動活動が復活するまでには少なくとも6週間以上必要と考えられます。また、末梢気道の閉塞が改善するには約6ヶ月間必要といわれています。短期間の禁煙は喀痰が増加するにもかかわらず胸部が堅くなり喀痰排出が困難になることがあり、逆に有害であるという意見もあります。このように呼吸器系に対する影響が改善するには心血管系への影響の改善に比べて長期間を要します。

3.免疫系への影響
 喫煙は、白血球増加、免疫グロブリンの減少、など免疫能を抑制します。術後の創部感染や、肺炎などの感染症のリスクが高くなります。また、免疫能の低下は癌の進行や転移にも影響を及ぼす可能性があります。免疫能の回復には約6週間必要といわれています。

4.まとめ
 以上、喫煙が身体に及ぼす影響について簡単に説明しました。心血管系に対する影響は、数日の禁煙で回復しますが、呼吸器系や免疫能に対する影響は、6週間以上必要です。現在健康な皆さんも、急病や事故で急に手術を受ける可能性があります。手術中に低酸素状態となり脳や心臓などの重要臓器に悪影響を及ぼさないためにも禁煙について考えてみませんか。
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