麻酔科
概要
麻酔科は、現在12名の常勤麻酔科医師に富山大学からの応援を仰ぎ日々の診療を行っています。麻酔科といえば手術中の麻酔管理だけが業務と思われがちですが、当科では手術患者さんの麻酔前診察から術中管理、術後管理までの周術期管理をモットーに麻酔業務を行っています。
さらには、ペインクリニック外来での各種難治性疼痛疾患や神経ブロックが適応となる非疼痛疾患の診療も行っています。
1.現在当院では、4階中央手術部の手術室12室と母子医療センターに隣接した2階手術室2室(2012年6月から稼働)の14室で日々の手術症例に対応し、年間約7,000例の手術が行われています。そのうち麻酔科管理症例は2013年4,445例、2014年4,473例、2015年4,596例と年々増加しています。また、2016年秋には先端医療棟が完成し、それに伴いロボット手術室、ハイブリッド手術室を含めた低侵襲手術室9室が稼働します。さらには既存棟手術室も改修され、2017年春には4階中央手術部15室+2階手術室2室体制で稼働いたします。近年の高齢化に伴い、糖尿病・高血圧・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・慢性腎臓病などの合併症を有する患者さんが増加しており、より細やかな周術期患者管理が要求されています。当院でも、経食道心エコー装置、BISモニタ(脳波診断装置)、低侵襲血行動態モニタなどのME機器を活用しています。また、術後鎮痛の方法として硬膜外もしくは静脈内PCA(患者自己調節鎮痛)装置の使用、大腿神経ブロックや腹横筋膜面ブロックなどの末梢神経ブロックの併用など、より安全で良質な周術期管理に努めています。
2.ペインクリニック外来の初診患者数は年間90人前後です。対象疾患は各種難治性疼痛疾患から花粉症、顔面神経麻痺などの非疼痛疾患まで多岐にわたっており、神経ブロック療法、薬物療法、理学療法などで治療を行っております。また、必要に応じて皮膚科、精神科、神経内科、整形外科とも連携を取って治療に当たらせていただいています。
診療担当表
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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1診 | 吉田 | 吉田 | |||
2診 |
1診はペインクリニック外来
ペインクリニック初診は火、水
2診は麻酔前診察(診察医は不定)
医師紹介
医師名・職位 | 専門分野 | 資格 | |
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部長 吉田 仁 (よしだ ひとし) |
麻酔一般、ペインクリニック(頚椎・腰椎性疼痛) |
日本麻酔学会指導医 日本ペインクリニック学会専門医 |
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部長 山田 正名 (やまだ まさな) |
麻酔一般 | 日本麻酔科学会指導医 |
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医長 荒井 理歩 (あらい りほ) |
心臓血管麻酔 |
日本麻酔学会指導医 心臓血管麻酔専門医 |
医長 小宮 良輔 (こみや りょうすけ) |
麻酔一般 |
日本麻酔科学会専門医 日本心臓血管麻酔学会専門医 厚生労働省認定麻酔科標榜医 |
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医長 大石 博史 (おおいし ひろふみ) |
麻酔一般 | 日本麻酔学会専門医 |
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医長 長岡 治美 (ながおか はるみ) |
麻酔一般 | 日本麻酔学会専門医 |
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副医長 宇佐美 潤 (うさみ じゅん) |
麻酔一般 | 日本麻酔学会専門医 |
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副医長 長崎 晶美 (ながさき あきみ) |
麻酔一般 | 日本麻酔学会専門医 |
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副医長 那須 倫範 (なす みちのり) |
麻酔一般 | 日本麻酔学会専門医 |
医員 清水 美彩子 (しみず みさこ) |
麻酔一般 | 日本麻酔科学会認定医 | |
医員 立花 怜 (たちばな りょう) |
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医員 津田 翔 (つだ わたる) |
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医師 河合 玲奈 (かわい れいな) |
麻酔一般 |
治療について
1.帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹は、幼児期に罹患した水痘・帯状疱疹ウイルスが神経細胞に潜伏し、加齢や免疫能の低下により再活性化し、神経が障害される病気です。これにより知覚障害と運動麻痺をきたします。また、皮膚に発赤、腫脹、皮疹(水疱)が生じます。
通常は、初期治療(多くは皮膚科で治療されます)により2~4週間で水疱はかさぶたとなり、軽度の色素沈着を残して治ります。しかしながら、皮疹が消失した後も痛みを残し、患者さんを苦しめる状態を帯状疱疹後神経痛と呼んでいます。
麻酔科(ペインクリニック科)では帯状疱疹後神経痛の患者さんに対して、神経ブロック療法を中心に治療を行っています。神経ブロック療法とは、神経に局所麻酔薬を注射し、一時的に神経を麻痺させる方法です。頭頚部、上肢の帯状疱疹後神経痛に対しては、外来通院(入院も可)で喉仏の横のあたりに局所麻酔薬を注射する星状神経節ブロックを行います。胸部以下の帯状疱疹後神経痛に対しては、入院の上、背中から細いチューブ(カテーテル)を硬膜外腔(脊髄のすぐそば)に挿入し、局所麻酔薬を持続的に注入する持続硬膜外ブロックを行います。何らかの理由で神経ブロックを行えない場合は、レーザー照射やキセノン光による温熱療法で代用することもあります。また、抗うつ薬や種々の鎮痛薬の内服も併用しています。
帯状疱疹の発症早期から神経ブロック療法を開始した方が、疼痛、腫脹、発赤、皮疹の治癒を促進し、帯状疱疹後神経痛発生を予防する可能性があると考えられますので、帯状疱疹に罹患したら、なるべく早く麻酔科(ペインクリニック科)を受診されることをお勧めします。一方、治療開始が帯状疱疹発症後3ヶ月を超えた場合は、完治はなかなか困難です。現在のところ治療目標として、「夜間は眠れる」、「日中は、何かに集中していれば痛みを忘れる」、治療開始前の痛みが10段階の10として、これが3程度になれば、一応治療は成功したと考えていただいています。
2.癌性疼痛
1986年にWHO(世界保健機関)が先進諸国の鎮痛方法のノウハウを集約して作成したWHO式癌疼痛治療法を発表して以来、癌性疼痛で苦しむ患者さんは年々少なくなってきています。この方法は、鎮痛薬として、非麻薬性鎮痛薬、弱麻薬性鎮痛薬、強麻薬性鎮痛薬を痛みの程度に合わせて段階的に調節して使用する方法です。また、鎮痛薬以外にも鎮痛補助薬として抗うつ薬、抗けいれん薬、向精神薬、ステロイド等も併用します。さらには神経ブロック療法、放射線治療、理学療法、心理療法などを組み合わせて疼痛治療を行います。
麻酔科(ペインクリニック科)では、神経ブロック療法により癌性疼痛の治療を行っています。癌性疼痛は、広範囲で、さまざまな要因がからみ合い複雑な痛みの形を呈することが多いため、神経ブロックのみで完全に除痛することは困難ですが、併用することにより鎮痛薬の量を減らすことは可能です。神経ブロック療法としては、内臓神経ブロック(腹腔神経叢ブロック)、くも膜下ブロック、硬膜外ブロック、などがあります.癌性疼痛に対する神経ブロックでは、局所麻酔薬ではなく神経破壊薬を用いることが多く、ブロックによっては、痛みをとると同時に運動神経麻痺も生じることがあります。したがって、痛みの部位や性状など患者さんとよく相談してブロックの適応を決定しています。
癌性疼痛についてもっと詳しく知りたい場合は、当院緩和ケア部のホームページを御覧ください。