富山県立中央病院

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お知らせ

産婦人科 一般向けのお話

2016/03/16

1.子宮がん検診について

子宮がんには、癌の発生する部位の違いで「子宮頸部がん」と「子宮体部がん」とがあります。

1.子宮頸部がん検診

若い人も要注意!

子宮の頸部は「子宮の入り口」にあたるところで、その一部は膣の中に顔を出しています。この部位に発生するのが子宮頸部がんです。子宮頸部に病変ができて癌に進んでいく過程はよく研究されていて、(1)軽度異型上皮→(2)中等度~高度異型上皮→(3)上皮内がん→(4)浸潤癌の順に進行していくと考えられています。「異型上皮」は前がん病変といって、がんに進む可能性が高い状態ですが、自然に消失することもあります。「上皮内がん」はいわゆる初期がんの状態です。一般的には上皮内がんまでならば、子宮の入り口の一部を切除するだけで治ります。ですからこの段階までに発見できれば子宮を摘出せずに治るので若い人であっても妊娠することが可能です。
ところで、最近この子宮頸部がんの発生の過程に「HPV(humann papilloma virus:ヒト乳頭腫ウィルス)」が関わっていることがわかってきました。このウイルスは性行為でうつるともいわれていて、最近の若い人たちの性行動の現状にも関係して、子宮頸部がんや前がん病変の異型上皮は若い人たちにも増加しつつあるといわれてます。そして残念ながら初期癌の段階までは殆ど症状がないために、発見されたときには進行がんの状態で、-有名な女優さんのように-若くして子宮を失う結果につながるひとがいらっしゃることも事実です。
子宮頸部がんの検診は、膣の奥に位置する子宮の入り口の表面を綿棒やブラシ、ヘラのようなものでこすって細胞をとって顕微鏡で観察することによって行われます。年齢に関わらず、最低1年に1度は検診を受けて安心感のある生活を過ごすこと・・・・考えてみてはいかがですか?

2.子宮体部がん検診

不正性器出血・月経不順の方は、是非検診を!

子宮の奥で赤ちゃんが育つところ、そこが子宮体部ですが、同時に月経を起こす子宮内膜が存在する場所でもあります。この子宮内膜から発生するのが子宮体がんで、内膜癌とも呼ばれます。子宮体がんは頚癌に比べて、年々増加しているといわれて、我々の病院の治療実績からも同様の傾向がうかがえます。
当院の子宮体癌治療症例数の推移
子宮体がんには、頚がんと同様に「子宮内膜増殖症」という前がん病変の状態があることがわかっています。でも、頚部がんと違うところは比較的早い段階から症状を伴いやすく、子宮体がんの方の90%以上が何らかの不正性器出血を伴って発見されています。ですから、ホルモン状態が不安定になりやすい更年期は注意して頂きたいと思いますし、若い人であっても無排卵月経や月経不順が慢性的になっているひとには検診をお奨めします。例えがんになっていても、早いうちに発見できればホルモン剤で治療をして妊娠・出産された方の報告例もあります。体がん検診の方法は、器具を子宮内に挿入して子宮内膜の一部を採取することで行われます。私どもの病院では直径3mm弱のチューブの中にナイロンブラシをいれた「ウテロブラシ」という器具を用いて体がん検診を行っています。もちろん子宮の中に器具を入れるときには痛みを伴いますが、結果的に検査ができないということは殆どありません。
当院のウテロブラシによる内膜細胞採取法
プレパラート上へのたたきつけと圧挫・すり合わせ
ただし、閉経後で子宮の入り口が固く閉じていらっしゃるような場合は中止して超音波検査で子宮の内膜を映し出して検診に代えることもあります。
ご心配な方は相談致しますので、是非検診を受けて下さい。

子宮内膜の細胞所見

良性内膜所見
内膜増殖症以上の所見

2.性感染症(STD)について

1.急増するクラミジア・社会にじわじわ浸透するHIV感染

性病といえば、梅毒・淋病といったことばが頭に浮かぶ大人の方が大部分でしょう。ところが今の現状は全く異なっているといわざるを得ません。現在の性病の主流は何といってもクラミジアです。20才前後の性交経験のある人たちの5%(20人に1人)がこの感染症をもっていると推定されており、私達の富山県においても、多くの若い人たちが感染して治療を受けている現状がわかりました。

サンプルテキスト
年齢 合計【人】
14才 4
15才 7
16才 30
17才 63
18-19才 138
20代前半 301
20代後半 227
30代 128
40代 38
50代 5
60代 2
不明 28
合計 971

クラミジアは細菌よりも小さい微生物ですが、特定の抗生物質がよく効きます。
ですから、感染が判明すれば治療は可能ですが、子宮の入り口に感染した初期の段階では、黄色っぽいあるいは水っぽいおりものがあるだけです。
若い女性に感染して放置していると子宮から卵管へと進み、お腹の中全体に拡がってしまうこともあります。この時には高い熱はないのですが強い腹痛を伴います。こうなっても抗生物質で症状は治まりますが、この過程で卵管に癒着が起こって閉じてしまい将来の自然妊娠ができなくなってしまうことがあります。意外にこのこと、或いはこの病気に対する認識は薄いのが現状です。
大人が若い人たちの無防備な性行動を懸念して、性行為を行わないようにいうことも多少の理解はできますが、この病気に対する情報を正しく青少年に伝えないことに「面倒なことは避けて通る」といった姿勢を感じるのは不自然でしょうか?若い人たちには徐々にこの病気に対する認識が浸透しつつありますが、残念ながらこの病気を心配して悩んでいるにも関わらず、保険証を使って医療機関を受診すると「セックスしたことが親にバレる」といってそのままにしている若者たちが多くいます。
少子化の時代にとっては大問題ともいえるこの病気。若者も大人ももっと真剣に取り組んでいくことが必要です。この病気はコンドームを確実に毎回使えば予防できる病気です。しかし残念ながら、10代でみる限り人工妊娠中絶の件数は確実に増加しています。このことはコンドームを使わずに無防備な性行動にさらされている若者が増加しつつある現実を物語っています。とすれば、AIDSの病原体であるHIV感染も増加しつつあるはず・・・・。
実際、厚生労働省から発表されている統計からも感染が若年化していることがうかがわれます。10年前には、一般にあまり知られていなかったクラミジアが現在は性感染症の主流になっているわけですから、さらに今から10年後にはHIV感染が主流になっているなんてこともあり得るのかも知れません。

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