お知らせ
当院に手術支援ロボットが導入されました!
2017/08/09
昨年10月、当院に最新鋭の手術支援ロボットda Vinci (ダヴィンチ)Xiが昨年導入されました!
当科では、2017年1月より、前立腺癌に対するロボット支援前立腺全摘術(RALP)を開始しました。
ロボット支援前立腺全摘術を導入しました!
また、2017年度中に、腎癌に対するロボット支援腎部分切除術(RAPN)の開始を予定しています。
当院における腎腫瘍に対する腎温存手術
ロボット(図1:Intuitive Surgical社 da Vinci Xi Surgical System:ダヴィンチシステム)は、腹腔鏡手術を支援する手術支援ロボットです。ロボットといっても、ロボットが勝手に手術を行うわけではありません。患者さんのお腹に腹腔鏡ポート(小さな穴)を設置し、手術器具を取り付けたロボットアームと 内視鏡を挿入し(図2)、医師がサージョンコンソール(図3)と呼ばれる操作ボックスの中で内視鏡画像を見ながら操作して手術をします。
図1 da Vinci Xi Surgical System 左から、ペイシェントカート、ビジョンカート、サージョンコンソール)
ロボット手術の利点は、①患者さんの術後の機能温存を達成しやすいこと(確実性、機能性)、②手術時間や出血量が少なく、傷口が小さいので患者さんの負担が少ないこと(低侵襲性、効率性)です。
- 従来の開腹手術では、傷口が大きくなってしまいました。しかし、ダヴィンチ・システムを用いれば、腹腔鏡手術と同様に、腹部に小さな穴を数か所開けるだけで済みます。傷口もほとんど目立たず、術後の痛みも軽くなります。
図2 患者さんのお腹に挿入したポートとペイシェントカートを接続し、専用の手術器具を取り付けているところ。
- より少ない出血量
腹腔鏡手術と同様に、炭酸ガスで腹腔内を膨らませて手術を行います(気腹)。この気腹圧のために、開腹手術に比べて出血が少なくなります。 - 自在にコントロールできる拡大視野(図3)
腹腔鏡手術と同様、カメラを接近させることで術野が拡大され(約15倍まで拡大することが可能!)、肉眼で見る時よりもはるかに微細な構造(毛細血管や神経など)まで理解することができます。腹腔鏡手術とは異なり、手ぶれがありませんし、カメラ自体も術者が自在に操作できるため、自由に見たいところを細かく見ることができます。例えば前立腺がん手術では、細かい血管や神経・臓器の境界などが確認できるようになるため、術後の尿失禁予防や性機能温存、根治性の向上につながります(RALP紹介ページを参照ください)。
図3:サージョンコンソールに座る執刀医と、コンソールから見える術野のイメージ
- 自然で正確な鉗子の動き(図4,5)
腹腔鏡手術では、手元の動きと鉗子の動きは逆方向となりましたが、ロボット手術では同方向への自然な動きが可能です。また、腹腔鏡手術で用いる鉗子は、単なるまっすぐな棒の先端にハサミなどの道具が装着されているだけですが、ダヴィンチ・システムで用いる鉗子は自在に動く関節がついており、術者の思い通りの多彩な動きが可能です。先端にあたかも自分の手首があるような感覚です。
手ぶれ防止機能も備えており、緻密な鉗子操作を行うことも可能です。例えば従来の前立腺がん手術では難しいとされていた尿道と膀胱の吻合も非常に正確に行うことができます(RALP紹介ページを参照ください)。
図4:ロボット手術で用いる多関節鉗子。あたかも、「小さな自分の手首」がおなかの中にあるような感じで手術を行うことが可能である。
図5:サージョンコンソールでのコントローラの動き(左上)と、実際の鉗子の動き(右下)。術者が動かした通りに、鉗子が動くようになっている。
各術式の特徴 まとめ
開腹 | 腹腔鏡 | ロボット | |
出血量 | 多い | 少ない | 少ない |
創の大きさ | 大きい | 小さい | 小さい |
術野の見方 | 肉眼 | 内視鏡 カメラの接近により、肉眼の場合よりかなり大きく見える ※3D内視鏡もある |
3D内視鏡での立体視野 カメラの接近により、肉眼の場合よりかなり大きく見える |
手術の緻密さ | 拡大視野が得られない・出血が多いなどの理由で、劣る | 鉗子操作が難しく、緻密な手術が行いにくい(相当の熟練が必要) | コンソールで自在な鉗子操作ができ、拡大された良好な視野で手術が行えるため、非常に緻密な手術が可能 |
以上のような特長から、ロボット手術によって、すべてのほかの術式をはるかに凌駕する、低侵襲で確実な、根治性・機能温存に優れた手術を実現することになるでしょう。
当院でのロボット手術(泌尿器科部門)担当医師
瀬戸 親(部長):医師紹介へリンク
当院でのロボット手術のリーダーです。2017年1月のロボット導入から手術を開始し、まだ経験は浅いものの、これまでミニマム創手術で培った手術手技を活かして良好な手術成績を提供しています。
野原 隆弘:非常勤医師(金沢大学病院泌尿器科助教)
現在は金沢大学に在籍していますが、毎週月曜と木曜は当院で手術・外来などの診療に携わっております。金沢大学で2014年からロボット手術に携わり、その経験を活かして当院においてもロボット手術の指揮官として、当院のロボット手術を支えています。手術のクオリティは非常に高く、患者さんの術後経過は大変良好です。
資格:日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本癌治療認定医機構 癌治療認定医
日本移植学会 移植認定医
日本臨床腎移植学会 腎移植認定医
腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創手術)施設基準医
日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会腹腔鏡技術認定医
Da Vinci certificate
島 崇:医師紹介へリンク
ロボット手術では主に助手を担当しています。
文責:野原隆弘