富山県立中央病院

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お知らせ

当院における腎腫瘍に対する腎温存手術

2017/08/09

 腎実質に発生する腫瘍の大半は腎癌です。腎癌に対する手術においては、3つの目標(1.癌の根治、2.腎機能温存、3.合併症なし)を達成することが肝要です。特に、腎機能を保つことは、将来的な脳・心血管障害の危険を減らすことに繋がります。それによって、腎摘除術ではなく腎部分切除術を行ったほうが、術後の長期生存率が高いということが示されています。
 1.ミニマム創手術
 当科では、以前から腎部分切除に力を入れて取り組んでいます。手術は原則としてミニマム創手術にて行い、上記の3つの目標を達成しつつ、5~7cmの小さな創(ミニマム創)で行うことで患者さんの負担を軽減しています。ミニマム創腎部分切除術においては、腫瘍が創の真下にくるように皮膚切開をおくこと、術中血流遮断のために腎動脈・静脈を剥離、確保できることが肝要です。当科で行っている「腰部高位切開法」であれば、容易にこのことが達成できますから、安全に腎部分切除術が行えます。
 まず手術の前にCTをよく観察し、皮膚切開(緩い斜切開)する部位を想定します。我々は、胸膜の折り返しより頭側で皮膚切開しても、胸膜損傷することなく腎上極までも直下に観察することが可能であることを見出しています。そこで手術に際し、皮膚切開の部位は、腫瘍の位置が腎門部より頭側なら腫瘍の高さで、腎門部より尾側であっても腎門部の高さで設定することにしています。このように取り決めると、たいていは第11肋骨を一部切除することになります。(図4‐1、4‐2、4‐3、4‐4、4‐5)。



 肋骨の丁寧な剥離に続いて胸膜と横隔膜を頭側へ寄せ、リングリトラクターを創部に装着して腎臓周囲に空間を作り、創の真下に腫瘍を移動します。腎動脈・静脈の血流を遮断し、腎を氷冷し、その間に手早く腫瘍を切除し、切除断端を縫合して終了です。氷冷するのは、血流の遮断によって起こる腎臓の機能障害をできるだけ少なくするためです。
 腹腔鏡手術では難しいとされる大きめの腫瘍にも、十分冷却した上で安全・確実に操作が行えます。小さな皮膚切開ですので、術後の創部痛は強くありませんし、早期回復が可能です。
 当科における腎部分切除術の施行症例はここ数年で急増しており、手術手技の向上により皮膚切開長もますます小さくなっています。(図5、6)。


2.ロボット手術
 腎門部に接する腎腫瘍や、完全に埋没した腎腫瘍など、部位によっては上記のミニマム創手術で困難な場合もありました。その場合は、通常の開腹手術を行うか、腎摘除術を行うしかありませんでした。しかし2016年4月、ロボット支援腎部分切除術が保険適応となり、ミニマム創では腎部分切除が難しい症例でも創口の小さい手術が行えるようになりました。手術支援ロボットを用いることにより、3つの目標(1.癌の根治、2.腎機能温存、3.合併症なし)を小さな創で成し遂げることが容易となり、患者さんが受けられる恩恵も大きくなることが予想されます。
 2017年中に、当科でもロボット支援腎部分切除を開始する予定です。互いの術式の長所を生かし、弱点を補いあうことによって、ほぼすべての患者さんが体の負担の少ない腎部分切除を受けられるようになるでしょう。
   当院に手術支援ロボットが導入されました!

3.画像解析ソフトを用いた腎部分切除術の術前シミュレーション
 当院では、2016年に画像解析ソフト(富士フィルム社;SYNAPSE VINCENT)を導入いたしました。図7のように、腎の3次元画像を作成し、手術のときに腫瘍をどのように切除するか、シミュレーションを行っています。また、腎動脈がどのように枝分かれし、その分枝が腎臓のどの部分を栄養しているのかも、短時間で把握することができます。これによって、腎部分切除術の術前に、綿密な手術プランを立てることができるようになりました。
 また、当院では院内のどの電子カルテ端末でもこのソフトが利用できるため、特に手術においては手術室内の電子カルテを用いて術中に3次元画像を即座に確認できます。手術の進行もスムースになり、手術時間の短縮や合併症の減少に寄与していると考えられます。
 ミニマム創手術において皮膚切開長が小さくなっているのは、この画像解析ソフトのおかげでもあると思います。これから導入予定のロボット支援腎部分切除においても、このソフトが重要な役目を担ってくれることでしょう。

図7 

右腎臟と、右腎腫瘍のようす。画像解析ソフトにて、CTからこのような立体画像を描くことができ、手術の際のイメージがしやすくなる。




 右腎動脈の分枝が支配している領域を画像解析ソフトで容易に解析することができる。腫瘍は分枝①②の支配領域にまたがっているので、腎部分切除の際は矢印の部分で動脈を遮断すれば良いことが分かる。分枝③の支配領域には腫瘍がないので、遮断の必要がない。

 

 当院では以前から腎温存手術に力をいれてきました。いかに腎温存手術を低侵襲かつ安全に行うか。これを目指して、「腰部高位切開法」という独自の方法で手術を行い、良好な手術成績をもたらしてきました。さらにロボット手術を今後導入することにより、さらに腎温存手術の質が向上することでしょう。

文責:野原隆弘

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