富山県立中央病院

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お知らせ

ロボット支援前立腺全摘術を導入しました!

2017/08/09

当院に最新鋭の手術支援ロボットda Vinci (ダヴィンチ)Xiが昨年導入されました!
  当院に手術支援ロボットが導入されました!
当科では、2017年1月より前立腺癌に対してロボット支援前立腺全摘術(RALP)を開始しました。ここでは、RALPの紹介をいたします。
 
 転移のない前立腺癌に対する標準治療の一つとして、手術による前立腺全摘除術があります。
 従来、当科では患者さんへ与える負担の少ない治療として小切開手術を行ってきました。下腹部の6㎝程度の小さな創で手術を行うことにより、患者さんの術後回復が早期となり、術後9日目ごろに退院することができておりました。しかしながら、前立腺周囲には細かい血管が無数にあり、開腹や小切開で行う手術は出血がどうしても多くなります。また、術後の尿失禁をできるだけ少なくしたり、勃起の機能を温存したりするには、前立腺のすぐそばにある神経血管を前立腺から剥離しなければならず、出血量がさらに多くなってしまいます。前立腺は骨盤の奥深くにあり、神経血管を剥離する手技自体も熟練した技術が必要です。
 負担の少ない手術といえば、腹腔鏡による前立腺全摘術があります。下腹部を切開せずに1cm前後の穴を数箇所あけて、そこからカメラや細長い鉗子を挿入して手術を行います。この術式ですと、カメラを接近させることにより奥深くの前立腺でもよく見ながら手術が行えます。しかし腹腔鏡の鉗子は、先端にハサミなどの器具が付いた長い真っすぐな棒ですから、開腹や小切開の手術よりはるかに難しく、熟練するのに時間がかかります。普通に手で折り鶴を折るのが開腹手術、菜箸で折り鶴を折るのが腹腔鏡手術といったらわかりやすいでしょうか?難易度が高く熟練に時間を要する(熟練するまでの多くの症例において手術の成績が悪くなる可能性がある)ため、前立腺に対する腹腔鏡手術を行っている施設は限られています。
 そこで、開腹・小切開手術の弱点、腹腔鏡手術の弱点を補うため、ロボット支援前立腺全摘術が開発されました。ロボット支援手術では、①3Dモニターを用いることによって、術野を立体的に観察でき、あたかも前立腺のすぐそばに両目があるかのように手術が行えるようになりました。また、②細長い棒である鉗子に、あたかも医師の腕や手首のように関節がついており、まるで自分の腕が小さくなっておなかに入っているかの如く、コンソール(操縦席)で操ることができるようになりました。その結果、出血が少なく、短時間で終わり、癌を取りきることと大切な機能(排尿機能、勃起機能)を残すことの両立が達成できる精密で確実な手術が行えるようになったわけです(詳細は、daVinci紹介のページを参照ください)。欧米では2000年頃よりロボット手術が導入され、特にロボット手術が盛んなアメリカでは、その成績の良さから開始より10年を待たずに前立腺全摘術のほとんどがロボット手術で行われるようになりました。日本では、平成24年よりロボット支援前立腺全摘術が保険適応となったことで急速に広まっており、平成28年4月時点で、全国200施設以上で施行されています。当施設でも遅ればせながら平成29年1月よりロボット手術を開始しました。まだ開始して間もないですが、輸血を必要とした症例は自己血を含めて1例もありませんし、術後の排尿機能や勃起機能も満足のいくものとなっております。

・前立腺全摘において、術後に問題となっていること(後遺症)
 癌の手術は、「癌を取りきる」ことを目標としています。周りの組織を一緒に摘出すれば、癌を取りきることは容易でしょう。しかし、周りの組織を取りすぎると、それが担っている大事な機能が損なわれてしまいます。前立腺全摘では、主に「尿失禁」と「勃起障害」が後遺症として残ります。勃起を司る神経は、前立腺周囲にへばりつくように存在しています。この神経を残すように手術を行うこと(神経温存術式)ができ、術後の勃起能の回復に有利と考えられています。また、神経温存術式を行えば、術後に尿失禁がほとんどないか、生じても回復が早いというデータも示されています。神経温存術式では、癌を取り残さないように、かつ神経をはじめとした前立腺周囲の組織をできるだけ残すよう、症例に応じた緻密な剥離を行わなければなりません。以前の開腹手術・小切開手術では出血などにより技術的に難しかった神経温存術式ですが、ロボットを使うことによりとても良い視野での繊細な操作が可能となり、前立腺癌の状態に応じ、症例毎の適切な手術がほぼ予定通りに行えるようになっています

ロボット前立腺全摘術 小切開手術
手術の精密さ 非常に精密な手術が可能
症例に応じて神経温存のための適切な剥離が行いやすい
→根治性と機能温存の両立が可能
やや精密さに欠ける
ほぼ同じ手順方法しか行えない
手術の所要時間 短い 長い
出血量 非常に少ない 多い
自己血の貯血 不要 必要
術後の尿失禁 早期に回復 やや早期に回復
術後の勃起機能 症例に応じて温存するレベルを選択できるため、より多くの患者さんが温存可能 温存可能だが、ロボットにくらべ精密さに欠ける
合併症 腸管合併症が起こりうる 出血
コスト 高い(しかし実質的な患者さんの負担は従来の手術と変わらない) ロボット手術にくらべ低コスト(実質的な患者さんの負担はロボットと変わらない)

図1:開腹手術とロボット手術の創の違い

図2:実際のロボット手術風景

コンソールに座る術者①
コンソールに座る術者②
ロボットアームが患者さんの体に装着されているところ
助手が患者さんの隣に座り、手術の手伝いをしている① ロボットアームはコンソールで術者が操縦したとおりに動く。
助手が患者さんの隣に座り、手術の手伝いをしている② ロボットアームはコンソールで術者が操縦したとおりに動く。
 

以前まで行っていた小切開手術でも成績は良いものでしたが、ロボットを用いて前立腺全摘を行うことによって、術後の排尿機能や勃起機能はさらに向上したと実感しています。まだ当院ではロボット前立腺全摘術を始めたばかりですが、小切開手術で得てきた技術と、私がこれまで金沢大学で学んできたロボットの技術を融合させることにより、導入初期から質の高い手術が提供できていると思います。これからも多くの患者さんに恩恵を施すことができると考えています。

文責:野原隆弘

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